016 =====

 鶲にあんな返しをしたのは、数日間青葉と一緒に過ごして分かったことがあったからだ。青葉は昼食を食べながら汐見のことを中心に色々話してくれたから、とてもにぎやかな時間を過ごせていた。それこそ、弱みを握られてるなんて忘れるくらいに。

 でも青葉は、俺が思っていた以上に転入生のことで悩んでいたのだ。


「俺思うんだけど、俺と過ごすより汐見と過ごした方がいいんじゃないか?」


 それは、当たり前の疑問だった。確かに自分の友達と仲良くしてくれたら、その人に対する気持ちはプラスになるだろう。でも、恋愛に発展させたいのなら友達とばかりコンタクトをとるべきではないのは、誰にでも分かることのハズ。
 では何か他に、転入生とではなく俺と仲良くする理由があるのだろうか。

 そう考えたところで、何も思い付かなかった。だからこそ俺は尋ねたのだ。


「オレは、柚流のことが好きだ」
「うん」
「でも、それが友達としてなのか恋愛的な意味なのかがまだ分からないんだ」
「……、うん」


 汐見と最初にクラスで話したのは青葉だと聞いている。それまで親衛隊がいることもあって友達のいなかった青葉に出来た、大切な友達。しかし、同時に誰にも譲りたくないという嫉妬の感情が生まれた。それはどちらの意味なのか。
 青葉自身にもまだ判断がつかないようだった。

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