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「りんごは何に出るんだ?」
その日はなぜかさほど急ぐことをしなかったので、あっさりと転入生に捕まった。
もう6月だし、転入生っていつまでも呼んでられないと思いつつも、一度慣れてしまった呼び方はなかなか直らない。あだ名と一緒だ。
「俺はドッジボールに出るんだ! 楽しみだよなッ」
「そうなんだ、俺は卓球。スポーツはやるより見る派なんだ」
「えー、実際にやる方が断然楽しいって!」
転入生とそんな会話をした。新学期が始まって2ヶ月、俺にもようやく余裕が出てきたようだ。
関わりたいかと言ったらまた別だけど、以前のような避け方とは違う。適度な距離を置いている、そんな感じだ。
転入生を適当に言いくるめて美術室への道を歩く。
転入生は確かに俺と仲良くしたがっているが、今のところは東雲たちの方が大事なようで。現に、ついてこようとした転入生に「東雲たちが待ってるんだろ?」と言えば素直に従った。言わずもがな新も連れていかれたけど。
「…おい」
「え?」
ぼんやりと歩いていると、もう少しで美術室というところで後ろから声をかけられた。
振り返れば、少し先の壁に寄りかかる東雲がこちらを見ているのが見えた。
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