あーあー、何これ。ついてない。
月曜は必ず遅刻を危惧して慌てると分かっていたのに。
今年初めての雪が降った。次の朝は路面の凍結は免れない。のに。私はローファーを履いて家を飛び出した。
履き直してくる余裕はないからそのまま走っていたけど、転ぶかもって思った瞬間つるりと転んだ。最悪。タイツ破けちゃって、膝から血が出る。
幸い誰も通ってなかったけど、それはそれで恥ずかしい。
ちょっと泣きそうになりながら立ち上がってスカートを叩く。



「………」



ついてない。
慎重に早歩きすることにした。ようやく人がチラホラ見えてきて、でもこの人たちこんな速度で歩いてるんじゃ遅刻だなぁ。って余所見してればまた足元がふわりと浮いた感覚がした。



バカバカバカ、慎重さを欠いたら即転けると教わったはずよ、ってかこんな顔見知りだらけの前で転けたくないー




「………!!?」




私は転ばなかった。でも態勢は際どい。ほんとギリギリ。何かを掴んだ手に全体重をかける。



「あぶな……」



ぐん、と引っ張られて腕をつりそうになりながら、後ろを振り返る。



「あ、ゆ、悠太」

「…ダメだよ。こんな滑りやすい日に急いだら。しかもローファー」

「あ、はい。ありがとう…。おはよう」

「おはよう」



よく、間に合ったなぁ。
ちょうど声をかけようとしたところだったらしい。偶然といえば偶然なのだが、思わず見惚れてしまった。悠太が王子様に見える。



「なーに見惚れてるの」

「あ、祐希、おはよう」



悠太の後ろからひょっこり祐希が現れる。見惚れてるのがバレるって相当恥ずかしい。今すぐ消えたい。祐希はいつも私の図星を突くから羞恥心で毎回瀕死なのだ。やめていただきたい。
なんていう私をじっと見たかと思うと、祐希は突然前にやってきてしゃがみ込む。スカートめくられ



「血出てるよ」



ない。
祐希が凝視しているのはさっき家の近くで転けたほうのキズだ。
派手にタイツに穴が空いてて恥ずかしいから見ないでほしい。
あーあ、もう、さっきから恥ずかしいことだらけでついて



「全く全く、お子ちゃまなんだから。しょうがないから祐希くんが消毒してあげましょう。悠太、ばんそこうは」

「あるよ」

「学校すぐそこだしそっちでいっか」

「うん。手、繋いでていいよ。また転んじゃいそうだし」



…る。
祐希が世話焼くなんてめずらしい。悠太は最初から気付いててそのつもりだったらしいし、あれれ、雪道さまさまなんじゃないの。
あ、2人に手ひっぱってもらってお姫様みたいだ。あぁ、なんかニヤける。



「なんかさ、捕えられた宇宙人の図だよね」

「あ、確かに」



やっぱり今のはナシの方向で。



ーーー
祐希くんこんな子じゃありません。

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