「あれっ先客かな」
「えっ。あ、幸村くんか。ごめん邪魔?」
「そんなことないよ。ただめずらしいなって思っただけだし」
「めずらしい?私が屋上にいるのが?」
「うん。いつもお昼は教室でしょ」
「意外と把握してるんだね」
「まぁ同じクラスだし。俺はこの花壇に水やりによく来るよ」
「園芸委員だもんね。幸村くん花似合うよ」
「そう?女々しいってことかな」
「ち、違うよー。そっち系じゃないよ。漫画とかでよく背景にバラブワッとかあるじゃん。あんな感じだよ
フレグランス」
「…ふは」
「えっ笑うとこ?」
「不破さんってテンパると口調変だね。じわじわくるいまの」
「あ、マジで。恥ずかしいな」
「花似合うって言われるの結構嫌だったけど、いまのはちょっと面白かったよ」
「ほんとですか。お墨付きだ」
「…なんか不破さんっておもしろいね?」
「え…幸村くんのツボ浅いだけじゃないの?」
「あー…そっちか…。いや、でも俺がツボる位置が的確なのはすごいでしょ」
「そー、かなー。じゃあ幸村くんにしかウケないのか」
「えー?そんなことないとおもうけどな。不破さんっていつも友達に囲まれてるじゃない」
「そんなん言ったら幸村くんはいっつも周りに人いて幸村くん自身が全く見えないじゃん」
「ぶはは!…そうなの?」
「幸村くんってぶははとか言うんだ。なんか学校の王子様って感じになってるじゃん」
「勝手にいるだけだよ。女の子のことでしょ?すごいよね、俺はまったく知らない子とかいるのに平気で周りウロチョロしてるんだよ」
「…幸村くんって案外腹黒いね?」
「そう?八方美人ではあるかな」
「んん、でもいいとおもうよ。幸村くんのルックスで中身も完璧とか人類の存在意義が揺らぐもん」
「ぶふっ……そんなに俺偉大かなぁ。実際俺不破さんに比べたら友達なんかぜんぜんいないよ」
「高嶺の花ってやつでしょ」
「あー…。やっぱ俺そんな感じなんだ。男子の友達ほんと欲しいんだけどね」
「幸村くんといたら自分が惨めだから仲良くしないんだよ。よく弁えてるけど幸村くんのことちゃんと知ったらみんな絡みやすいとおもうけどな」
「そっかー。みんな俺のこと王子だと思ってるんだもんね。神の子とか呼ばれてるしね」
「ぶっ!なにそれ神の子?ふはは……」
「やっぱ笑うよね?テニス界では平気で使ってるんだけど。ドヤ顔で『やはり神の子…!』とか言ってて内心笑いまくりだよね」
「あははは!幸村くん性格わる」
「こんなもんだよ俺なんて」
「いいよ。親しみやすいよその感じ。嫌味っぽくないし。それでいけば男子の友達なんてすぐできるよ」
「ほんと?不破さんが言うならそうかもね」
「あ、そんな信用されても困るよ…」
「別に責任押し付けたりしないよ。その前にさ、不破さん俺と友達になってよ」
「あ、いいよ」
「軽いねー、いいねその軽さ。俺好きだな」
「友達になるとかならないとか宣言なんて必要ないよ。自然に一緒にいてお互い大事に思えるかどうかでしょ」
「なるほどね。深いこと言うね」
「ははは。あっ昼休みおわる」
「ほんとだ。戻ろっか」
(何してんのお前ほんと鈍いんだから。俺がいないとだめだね)
(……豹変しすぎでは?)
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