誰が。


誰が今日を楽しく、甘く過ごすというのだ。なぜ今日があるのだ。

こんな習慣を作り上げたキリスト?なんて、そんな残酷な貴様のおかげで私は、私はまた今年も今日という苦しみにまみれた一日を迎えることになってしまった。


あえて言おう。
貴様のおかげで私はカレンダーに書き記されただけの法的束縛も何も持たないはずのイベント如きに屈することになった。



問責は、否、怒号ですら貴様はもう受け取ることもない。


なんてことだ。
神は万能にして私のような一市民を卑下してるとしか思えない。






…あぁ、これで少しは私も頭の良い非リアになれただろうか。
そう思いながらフッと枯れた笑みを零す。


不思議そうな顔をしている諸君。
意味を理解し得ないのならば問おう。




一体、現在何月何日何時何分何秒地球が何回回っ………



いや、やめておこう。
これ以上問い詰めるとただの小学生男児だ。


世界が、世界中が浮かれ弾ける日がきてしまったよ。



今日はクリスマス・イブだ。
さぁ、喜ぶがいいよ、リアルを充実させることに成功した勝ち組の諸君。
私は怒らないから、さぁ外に躍り出て深夜まで盃を共に飲み交わす朋友やらか、…彼氏やらと騒ぎ夜を明かすがいいよ。


卑屈になどなっていないさ。
私はいつだって人のためなれと日々を過ごしているのだからこんなくだらない行事に心乱されることなど……




「お前はいつまで自問自答を繰り返してりゃ気が済むんだっ!」


パコン!




…い、痛いじゃないかっ…!
一体誰だ。
非リアを代表してクリスマスに対して祝辞を述べていた私にっ…!



「ひゅ、日向先輩」



私の頭を上履きで叩いてきたのは先輩だったようだ。
あぁ、こんなときによりにもよって日向先輩が構ってくるとは。



ふ、これは逆転の発想というべきか。
構ってちゃんだな日向先輩は、まったく。



「薄ら笑ってんじゃねーぞ!俺は構ってちゃんでもねぇしお前を構おうとしたわけでもねぇ!」


「…っ、な、なら何の用で私の頭をそのクソ汚いうわ…?うわ、ぐつで叩いたっていうんです」


「てめぇ、俺の神聖な上履きを面影もないほど汚染されてるって言いてぇのか」


「だ、だってそうじゃないですか。…うっうわ!臭いなんか臭い先輩の汚いトコロの臭いがするので近づけないでください、…あっ、やだやだ背中なんかに入れちゃやあぁあー!!!」




「……紛らわしい声出してんじゃねーよダアホ!!痴女かてめぇは!!」




先輩は再び私の頭を上履きで叩いてきた。
う、うおぉ汚らわしry
日向先輩の上履きなんだから実際のところ大歓迎だが汚いものは汚い。



それに、そんな本当に痴女紛いな発言を本人を目の前にして言えるはずがない。



私は非リア代表だぞ?
リア充撲滅運動を推進するこの私が、恋情などに揺り動かされ、挙句「せ、先輩の汚い上履きもっとほしいのぉおっ……!!」などとはしたない所業を行ってたまるものか。



「先輩が気持ち悪いことするからじゃないですか!だからあのときお家に持って帰ってればよかったんですよ!」




「………お前、今日何の日だ」




先輩は上履きネタには終末がないことに気づき、少しの間の後、私を冷静に見下した。


チッ、この巨人め。
背が大きいなんて素敵にもほどがある。




…いや、巨人など女性の前では危害以外の何物でもあるまい。
ましてや眼鏡をかけているなど。




…関係性を見出せなかったことに対してはいっそ目をつぶろう。
あぁ、その縁なし眼鏡素敵です。



…声に出すわけないだろう。




「…愚問ですね先輩。先程までの私の面相を伺っておきながらわざとそれを私に問うんですか。なんて意地悪な人だ…やっ、だから上履きはダメなのぉぉおおー!!」

「今日はクリスマスだな、おぼぼチャンよぉ!!!」

「はっ、はひ、ソウデスネ…」



鬼畜だ。鬼畜眼鏡だこの男は。
くりすますだなんて初めて耳にした単語だというのにこの男は。



…いや、非リア代表として聞いたことないというのは嘘に等しいが。



いや嘘だが。



「そ、それで、今日がクリスマスということに私はなんの関係があるんです」



もしやリア充撲滅運動に参加していることに目下で気づいてしまったとか。



…いや、日向先輩のその眼鏡は黒板のクソ小さい文字を見るためのものであって決して裏社会のアレコレを監視するためのスーパーレンズではない、はずだ。


妄想はいい加減やめにしなければなるまい。
目を覚ますのだ非リア代表おぼぼほあが!




「飯食いに行くぞ」

「…………」

「デートだ、デート!どうせお前は非リア代表!とかなんとか強がって寂しく家でパソコンいじる予定だったんだろ。例え先約が埋まってたとしても俺は譲んねぇぞ」




「……………」

「お前の嫌いな食べ物、は、きのことにんじんだろ。知ってるから大丈夫だ。お前が行きたがりそうなイルミネーション街も調べといた。……お前が絶対俺からプレゼントもらいたがってるのも知ってる」




「……………」

「…やっと、決心したんだ。お前の気持ちを優先してやる。今年でお前は非リア卒業だ。異論は認めねぇ。いいな」




「…………はいっ…!」





誰が言い出したんだ非リアなんて。くたばってしまえよ。




ーーー
これは真面目にただの妄想







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