※臨也ちみ化注意













「ちょっと困ったことになってさあ」


――そう言った新羅に呼び出され、俺は新羅の家へ訪れた。

コイツが俺を頼るなんて珍しい…と思いながらインターホンを鳴らすと、すぐにドアが開き新羅が顔を出した。


「やあ静雄!待ってたよ!!」


やけに楽しそうな新羅に違和感を覚えつつも、誘われるままに中に入る。


「まさに驚天動地、きっと君も驚くよ!」


部屋に入る前からそう言われ、なんなんだと眉を寄せた。

ドアを開け部屋に入り、室内を見渡す。
パッと見では何も無い。わざわざ呼びたのだから何か見せられると思っていたが、まだ部屋には置いてないのか。


座ってれば新羅が切り出すだろ、といつものようにソファに座り、タバコを「あっ、しずちゃんだー」吸おうと取り出す。


――…ん?
なんか今、声が……


聞こえた声にキョロキョロと辺りを見渡してみるが、この部屋には俺とニヤニヤした新羅しかいない。


「こっちだよ!」


また声が聞こえて、今度はしっかりと声がした方向がわかった。
探しながら視線をやると、“それ”は俺の前にあるテーブルの上にいた。


「やっほーしずちゃーん!」
「……あ…?」


元気よく声を出して手を振ってきているそれは、臨也の姿をしていた。
――とはいっても、サイズはマグカップ程で、二頭身の小さい姿なのだが。

目の前で笑顔を向けてくる小さい臨也に、正直頭が真っ白になった。


(…なんだ、これ)


最近のロボット?
近頃のおもちゃはこんなに性能がいいのか?

そう思ってみるが、小さい臨也は意思を持って俺に話しかけてくる。


「しずちゃんしずちゃん!あそんで!」
「…………」


精一杯腕を伸ばしてくる様は可愛いと思うが、理解できないまま接することもできない。
首の無いセルティの相手はできるのに、というのは話が別だ。セルティは友達だし。こいつは臨也だし。


唖然としている俺に、新羅が楽しそうに笑いながら近づいてきた。


「父さんから送られてきた薬を臨也に飲ませてみたんだけどさ…面白いだろう?小さい臨也は性格も悪く無いしね」


可愛いもんだ、と人差し指で臨也の頭を撫でる新羅。臨也はそれに嬉しそうに笑った。
小動物のようで…まあ、認めたくないが確かに可愛いかもしれない。

「でさあ、」と言葉を続けた新羅は、ニコニコといつもの笑みを浮かべた。


「すぐ戻ると思うんだけど、それまで世話を…」
「帰る」


新羅の言葉を遮るように言い放って立ち上がる。
新羅は「ええ!?」とショックを受けたような声を上げたが、知ったことか。なんで俺が臨也の世話なんかしなくちゃいけねぇんだ。


ドアへ向かった俺に、「ええ!?」といつもより数段高い声で小さい臨也が声をあげた。


「しずちゃんかえるの?なんで?なんで?あそんでよぅ!」
「うぜぇ、テメェの相手なんかしてられっか!」


振り返りいつものように怒鳴ったら、それに驚いたのかビクリと体を震わせて、じわじわと目に涙をためて震え始めてしまった。
その姿に罪悪感を抱く。いくらノミ蟲とはいえ、こんな小さい生き物を泣かせてしまったのだから当然だ。

――でも、臨也だし。


そんな思いもあって、もう一度ドアへ向かう。すると後ろから本格的な鳴き声が聞こえてきた。

びーっと泣き叫ぶ臨也の声に、足が止まってしまった。


「…………」
「ま、って…よぅ…しうちゃあぁ」


元々回っていなかった呂律が更に回らなくなっている。

トテトテと小さい足音のようなものが聞こえて振り返ったら、臨也が俺の足に走り寄ってきていた。


「……ッ」
「まって…ぇえ…!」


ぎゅううっとズボンのすそを掴まれ、蹴りあげるなんてできなくて身動きが取れない。


「かえっちゃやらああ!いっしょ、いてよぉぉ…!」


ボロボロと泣きながら縋るように掴まれて、折れない人間がいるだろうか。
ため息を吐いてしゃがみ、自分の目の高さに臨也を持ち上げる。
えぐえぐと涙を流す臨也にまた罪悪感を抱いてしまって、ぶっきらぼうに謝った。


「…悪かったよ」
「し、うちゃ…おこってない?」
「……怒ってない」
「ほんと?」
「ああ」


頷いて見せたら臨也の顔がパアッと明るくなった。


「おれのこと、きらいじゃない?」


期待するようにそう問われ、言葉に詰まった。
キラキラとしている目は明らかに俺の答えを待ち望んでいる。

楽しげにこっちを見てくる新羅を睨みつけてから、ため息をついた。


「……今のお前は、嫌いじゃねぇよ」
「ほんと!?おれもしずちゃんだいすき!」


無邪気に笑ってそう言った臨也に、照れを感じながらも微笑んでみせた。


「だから――」


臨也が笑いながらまた言葉を紡ごうとして、視界が変わった。

突如視界いっぱいに広がる真っ白な煙。
新羅が「わあ」なんて気の抜けた声をあげているのを聞きながら、煙の中で目を凝らす。

煙に驚いて臨也から手を離してしまった。
床に落ちて怪我していたらどうしよう。踏みつぶしたらどうしよう。

そう焦っていた俺の首に、するりと触られ慣れた手が二本回ってきた。


「!?」


煙の中でも見えるほどに至近距離にあったのは、今度はいつもの臨也の姿だった。





見た目で態度変えないでくれる?




「だからこそ、シズちゃんも俺を大好きになるべきだよねえ」




▼あとがき
あれ、なんだこれ。

相互記念で「miserablE」のテルルさんへ。「ふしぎな薬飲まされてちっちゃくなったちみ臨也が、シズちゃんを精一杯追い掛ける」でした。

…どうしてこうなった、と言わざるを得ないww

ちみ化なので臨也を可愛くしようと試みたのですが、やりすぎてまるでシズイザのようだ…。
ちみ化中の臨也は全て演技、ということで。

リクエストの「追い掛ける」が当てはまっているのか微妙で申し訳ないです…。今回は私だけが楽しかった!^^←


これ書いてるとき一人で大爆笑してたのは内緒だ…←