――新宿にある俺の事務所。

波江が帰った後に訪れたシズちゃんは、ソファに座って芸能ニュースを見ている。
そんなシズちゃんにコーヒーを淹れながらも、緩みそうになる頬をなんとか堪える。


シズちゃんが俺の家にいる。
何度目であろうと、その事実だけでも嬉しい。

昔とは違って俺の一方通行ではなく――シズちゃんも望んで来てくれているのだから、嬉しくて堪らない。


「砂糖は自由に入れていいからね」
「ん」


お茶用の角砂糖の入った瓶と一緒に、机の上に二人分のコーヒーを置くと、シズちゃんは一度テレビから視線を外して俺に微笑んでくれた。
その笑みに思わず赤面して、目を逸らしてシズちゃんの横に座った。いつまでも慣れない自分が情けない。


ふわりと、コーヒーの香りが部屋に満ちて、その香りで俺もようやく落ち着いてきた。

テレビに映るニュースはお天気予報へと変わる。明日の池袋は晴天らしい。


「明日晴れだってよ」
「そうだね」


シズちゃんは晴れが嬉しいらしく、顔を明るくして俺に話しかけた。

俺はシズちゃんに会えるなら、どんな天気でも嬉しいのだけど。まあシズちゃんには晴れが似合うよね。


ボチャンボチャンとシズちゃんが何個か角砂糖をコーヒーに入れる。
5個ほど入れたときに「入れすぎだよ」と苦笑したら、「うるせ」と口を尖らせていた。


「…なあ」
「うん?」


シズちゃんが口を開いたので相槌を打ったら、シズちゃんは視線を彷徨わせてコーヒーに口をつけた。
ず、とすすったのを見て、俺もコーヒーを一口飲む。


「………明日、晴れだし。たまにはどっか行こうぜ」


小さな声で言われて、その提案に首を傾げた。


「いいの?前は嫌がってたじゃない」


シズちゃんは「男同士で、しかも天敵の俺達が付き合ってるなんて、知られたくない」と言って外でのデートは嫌がっていたはず。
だからウチに呼んで、こうして一緒に過ごしているのだけど…どうしたのだろう。


俺が聞いたら、シズちゃんは目を泳がせながら「いや、あの」と口ごもりながらも続けた。


「最近は、外で喧嘩もしてねぇ、し。つか、その……一緒に歩き、てぇっていうか…」


言われた言葉に目を丸くしてしまった。

だが、つまりは――人目なんか気にならなくなってしまった、と。そう受け取って、いいのだろうか。


気付けば俺の頬は緩んでいて、それを見たシズちゃんに「アホ面」と笑われてしまった。

自分の頬に手を当てて、なんとか顔を戻そうと努めるけれど、なかなか戻らない。
ふにゃりと笑みを浮かべたままで、シズちゃんに顔を向けた。


「…もちろんだよ。どこへ行こうか」


俺の言葉に、シズちゃんは嬉しそうに微笑んで、上半身を完全に俺のほうへと向けた。
俺もシズちゃんと向かい合って一緒になって明日の計画を立てる。


「適当に池袋ブラブラしようぜ」
「池袋でいいの?どこか遠くへ行ってもいいんだよ?」
「いいよ。別にどこでも」
「じゃあ映画でも行く?」
「ミルキーウェイも行きてぇ」


明日行きたい場所を指折り数えながら、夢中になって言い合っていく。

正直言って俺はどこへ行ってもいいのだけど、シズちゃんが楽しそうに場所をあげていくのを見て、嬉しくて可愛くて、一緒になって場所をあげた。


案を出しながら、チラリとテレビに視線をやった。

今テレビのニュースが取り上げているのは、弟君の最新映画の話なのだけど、シズちゃんは気づいてないのかな。

気付かないのだろうか。それほどに、計画を立てるのが楽しいのだろうか。
そんな…そんなの、大切な弟よりも俺とのデートが大事だと、自惚れちゃうよなあ。


思わずふふ、と笑ったら、シズちゃんが不思議そうに首を傾げて俺を見てきた。
何でも無いよ、と微笑みかけたらシズちゃんも「そうか」と微笑むから、思わずその唇にキスをした。


それはとても幸せな

















「――って夢を見たんだよねえ」
「………」
「そんな目で俺を見ないでよシズちゃん。まあいいけど。とりあえず、ウチ来ない?」



▼あとがき
ということで、12345HITで宮古さんリクエスト「幸せな臨静」でした。

「幸せ…だと…っ!」が今回リクエスト受けた時の第一声でした←
幸せか…よかろう、ならば夢オチだ。と言う流れで今回の話が完成しました^^←←
でもタイトル前まで書いて、これをこのまま夢オチにしてしまっていいのかと心底悩みました。5秒くらい。

もう一つのリクエスト候補に臨デリがあったので悩んだのですが、デリックの難しさに挫折しましたorz

こんなものでよかったらどうぞっ^^
リクエストありがとうございました!