家に帰り、帰り道のコンビニで買った弁当を腹に詰める。
いつもは完食できる物が、今日は食う気になれなくて残してしまった。

机の上に弁当を放置して、適当にシャワーを浴びた。
浴室から出ても、ろくに髪も乾かさずにベッドに倒れ込んだ。
こんなことだから、髪がパサパサに痛んでしまうんだな、と視界に入り込んでくる髪の毛に思う。


臨也の仕事はいつ一段落するのだろうか。


そんなことばかり考えてしまう。

街で会うことはあるが、そのときは殺し合いに発展してしまうし、やはり部屋に行きたい。
臨也の部屋は存外気に入っているのだ。寂しささえなければ。


どうせ今日は会えないのだから、さっさと寝てしまおう。


そう思って、湿った髪はそのままに目を閉じた。

瞼の裏が赤いのは、部屋の電気を消していないからだろう。
起き上がるのも目を開けるのも億劫で、俺はそのまま意識を手放した。












「シズちゃん」


沈んでいた意識の中、不意に声が聞こえた。

少し身をよじらせて、視界に入る電気の光を眩しく思いながら目を開く。


「ああ、起きた?」


目が慣れてきてようやく、ベッドに座って俺の顔を見下ろしている臨也の姿を認識できた。
呼ばれただけで起きれたことを疑問に思ったが、まだ髪が湿っていたから、寝てからそれほど時間が経っていなかったのを理解する。
だがおかげで中途半端な睡眠をとってしまい、なかなか頭が働かなかった。


「駄目じゃないシズちゃん。電気消して寝ないと」
「おー…」
「髪も、乾かさないと」


そっと髪を撫でられて、また「おー…」と曖昧な返事を返す。

起きて、と肩を叩かれ、ようやく頭も冴えてきて、上半身を起こして欠伸を漏らした。
バリバリと頭をかいて、やっと臨也に尋ねる。


「…なんでテメェがここにいんだよ」
「シズちゃんが来なかったから」


言われて、む、と眉を寄せる。
別に文句を言われるのを考えて苛ついたわけではなく、行かなかったことへの気まずさからだが、気付いてくれるだろうか。。


「いや、別に文句言いに来たわけじゃないよ?」


気付いてなかった。


恋人とは言え、言わなければわからないんだなあ、と今更思う。
ため息をついた俺に、臨也が肩を竦める。


「暇でもいいじゃない。来週からはちゃんと来てよ」
「行っても行かなくても一緒だろ」
「一緒じゃない。シズちゃんがいない」


稀に見せるような真剣な顔でそう言うと、するっと俺の頬を撫でてくる。
男が男の頬を、なんて、客観視したら気持ち悪いのだろうが、今更か、と目を閉じた。


一瞬唇に触れただけの感触に、少し驚いた。
いつもはもっと、なんと言うか、しつこいのに。


ぎゅーっと抱き付かれて、戸惑いながらも背に腕を回して。
いつもならこんなにゆったりとはしないのに、どうしたのだろう。


「臨也…?」
「…シズちゃんが言ってくれたら、仕事なんか後に回すよ…シズちゃんも気にしてないのかと思ってたから」


ため息をつかれて、「んなわけないだろ、暇なんだよ」とぶっきらぼうに答えれば、笑い混じりに謝られた。


「ごめんごめん。
実を言うとさあ、何喋ったらいいかわかんなくて。前は殺しあってたわけだし、仕事してたら無言でも許されるかなって。この間帰しちゃったのは失敗だけど」
「…暇だった」
「それしか言わないねぇ」


苦笑されるが、素直に「寂しかった」なんて言えない。
ぎゅうっと、背中に回した腕に力を入れて、肩に顔を埋めた。


「今度から喋るように頑張るから、ちゃんと来てよ」
「…ん、悪い」
「仕事は、別に好きなわけじゃないんだよ?人間が好きだし、一番合ってるかなってだけで」


スッと体を離して、真正面から顔を見られる。
少し赤くなっている臨也の頬に、こちらもつられて赤くなった。




幸せの確認




「俺は君のことが何よりも好きなの」







▼あとがき
少し苦めのコーヒーを下さい←
珍しく甘めに書いたら自分が一番ダメージを受けた罠。

長く書いてたら訳ワカメになった。
もっとストーリーしっかりしてるのが好きなのに…!