選抜に、落ちた。



 今思えば、なんて言い訳臭いけれど、あれは俺のプレーじゃなかった。ただひたすら、水野を負かしてぇ、恥かかせてぇだけで、本当につまんねぇサッカーをしてたと思う。渋沢に、少し一人になる、とだけ告げ、宿舎からそのままの格好で一人、河原に座っている。そのときの渋沢はあからさまに心配そうな顔をしたが、頭を冷やして気持ちを整理する必要があった。それにしても、河原なんて、



「青春だねー」
「!」



 声に驚いて振り向くと、そこには桐原が立っていた。久しぶりー、なんて脳天気なことを言い、土手の上から手を振っている。足を取られながらもこっちに降りて来て、さり気なく隣に座った。この間の気力も何も感じられない桐原からは一転して、いつも通りの桐原だった。



「選抜、お疲れ様」
「……、落ちた」
「うん、聞いた。渋沢くんから」



 いつも通りを通り越して、イヤに落ち着いた桐原は、大きく伸びをして服が汚れるのも厭わずにごろりと寝転がった。視界の隅で濃い色をしたシャツが緩やかに上下するのが見える。



「自分のサッカー、見つかった?」



 光を反射してきらめく川面、その奥の奥を見つめる。桐原の方は、向けなかった。



「……10番を守ることが、俺のサッカーだと思ってた。誰かを負かしてトップに立って、また更に上を目指す。」
「……」
「でも、」
「……でも?」
「……10番に拘る、必要はない。チームから必要とされることが第一で、その結果が10番だって。」
「うん、」
「俺は、アイツらとずっと、サッカーを続けてぇ。だからそのために勝ち続ける。」


「そ。よかった」



「この借りは、都大会で返す」



 落ち込んでなんかいられねぇ。選抜に落ちても、次の大会は目前に迫っている。俺は俺のやり方で、みんなを認めさせる。どんなに時間がかかろうが、水野がウチに入って来ようが、来まいが関係ない。








(スッキリとまではいかねぇけど)(もうすぐ吹っ切れそう)


:)20110403




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