私の彼氏はふたつ下。たったふたつ。だけどいま、その小さなことがとてつもない大きな壁となってわたしにのしかかっている気がする。
今高校三年生の雅治と知り合ったのは彼が高一でわたしが高三のときだった。ほんとうに些細なできごと、委員会が同じだったのだ。
はじめての委員会で彼をみた瞬間はもうこわくて、わたしの方が年上なのにね、直視することすらできなかったの。でも委員会がおわったあと、書記のわたしはノートに決定事項を書いていたら、なぜかすごく視線感じてそちらを見るとその彼がいて。どうすればいいのか固まってしまったわたしに彼は優しく、楽しそうに笑いかけて、


「センパイ、名前は?」


って。今になってもどうしてあのとき名前を聞かれたかなんてわかんないけど、わたしたちが仲よくなるきっかけはこの一言だったに違いない。
それからはもうあっという間だった。廊下で会うたびに手をふられたり「センパイ」って話しかけてきたり。はじめは戸惑っていたけど、もともと人を好きになりやすいタイプだったわたしはすぐに彼に惹かれはじめた。
アドレスを交換してからは暇があったら彼とメールするようになって、気づけば彼のことばかり考えてて。卒業式の前日、雅治に告白されて、泣いてよろこんだりもしたな。

あれから、一年と六ヶ月が経った。
嬉しいことに、雅治とは恋人どうしのまま。だけどあの頃とは違って廊下ですれ違うことも、毎日のようにメールすることもなくなってしまった。わたしが卒業してすぐの頃は寂しくて、そう言うたびに彼はわたしのところへ来て、優しく抱き締めてくれた。でもいまとなってはどうだろうか。最近ろくにデートなんかしてないし、声すらきけてない。どうして?雅治が部活で忙しいから?ちがう、
慣れてしまったのだ。彼がそばにいないことに。
あの頃と違ってまったく別の場所にいる、その事実に慣れてしまったのだ。
それにたまに脳内によぎってしまうの。
雅治はもうわたしのことなんて好きじゃないんじゃないか、他に好きなコができて、もうわたしなんて要らないんじゃないか、わたしの存在が重荷になってるんじゃないか、って。
もしそうならば、もう覚悟はできてるから。…ううん、嘘、覚悟なんてできないよ。でも、我慢するから。
わたしはあなたの中の、楽な存在、であり続けたいの。




「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -