愛染 | ナノ




とおりゃんせ とおりゃんせ
ここはどこの細道じゃ
天神さまの細道じゃ
ちっと通して下しゃんせ
ご用のないものとおしゃせぬ
この子の七つのお祝いに
お札を納めに参ります
行きはよいよい 帰りはこわい
こわいながらも
とおりゃんせ とおりゃんせ
――童謡より


 食堂の片隅で、最近出来た唯一の女友達――逢沢さくら(あいざわさくら)さんと話していると急に電話が鳴った。液晶に表示された名前は、予想通り田沼だった。
一言断って電話に出る。
「上原、いまどこ?」
「食堂」
「ふーん。じゃあ、早く帰ってきて。今、オレ上原家の前だから」
それだけ言い、田沼は電話を切りやがった。お前は俺の彼女か。いや、彼女なんていたことないから知らないけど。
「田沼くんから? また呼び出しかしら」
 仲良いわね、と笑い逢沢さんは言った。
 仲が良いかは置いといて、"また"と言われるほど俺は田沼に呼び出されているのか。思わず苦笑する。
「じゃあ、また明日」
 手を振ると、逢沢さんも返してくれた。
 可愛い女の子だ。女の子とこうして、普通に話せる日が来るなんて入学時は思ってもみなかった。2回生になると女の子と話せるぞ、と当時の俺に言ってやりたい。

[ 5/68 ]

[*prev] [next#]
[戻る]
[しおりを挟む]
以下広告↓
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -