3 その日は、仁美ちゃんが来た以外には何事もなく無事に大学祭を終えた。 田沼に言われるがままに後夜祭にも打ち上げにも参加した俺は、田沼の部屋に帰ってきたときにはクタクタだった。流石に田沼も疲れたのか、皆と一緒にいた時は元気だったが、2人きりになった瞬間から眠そうな顔をしていた。何とか風呂を済ませ、互いに布団やベッドに入った。 暗闇の中、酷い耳鳴りに襲われる。自分が目を開いているのか、閉じているのか。立っているのか、座っているのかすらわからない。それどころか、身体も動かない。 金縛りだろうか、と考え身構えていると耳鳴りが更にひどくなった。頭痛を伴うそれに、息を詰める。痛みに耐えていると不意に、腕を掴まれた。グッと締め付けるような痛みに、呻き声が漏れる。 ガタンと大きな音がして、ふっと身体が軽くなった。頭や腕の痛みがなくなり、身体も動くようになる。上体起こして周りを見回した。闇に慣れてきた目で見るが、何の音だったのか解らない。 だが腕に視線を落として、血の気が引く。掴まれたような痕がくっきりと残っていた。心音が騒がしくなる。カーテンの隙間から光が漏れてくるまで眠れなかった。 目が覚めるとまだ田沼は寝ていた。ケータイで時間を確認すると10時を過ぎている。不在着信通知に気付き、確認する。相手は森で、9時半に着信があったらしい。 森に電話を掛け直しながら、田沼を起こさないようにとキッチンへと向かう。数コールですぐに繋がった。 「もしも、」 「すぐに会えないか」 俺の言葉を遮るように森は言った。焦った様子に、俺は頷くことしか出来ない。またあの喫茶店で会うことになった。 [戻る] [しおりを挟む] |