7 しばらく、そうして周りの音に耳を傾けていると森が口を開いた。 「最近、変わったことなかったか?」 森がジッと俺を見つめ……いや、正確には俺の後ろを見つめる。 チラリと振り返るが、俺には何も変わったものは見えない。 「いや、特には」 変わったことはない、と思う。ここ最近あったことを思い出しながら、首を横に振った。たぶん、ないよな。 「わかった。じゃあ、質問を変える。お前のこと見てる男を知っているか。視線を感じるだけでもいい」 森の言葉に、俺はゾッとする。森は俺の後ろを見たまま、目を放さない。 もしかして、森には俺が早朝に見たものが視えているのだろうか。もう一度後ろを見るが、やっぱり何も視えない。 「森からメールがくる直前に、たぶん視た」 やっぱり、と森は呟く。やっぱり、視えているのだろうか。 「それが出た原因は、心当たりないのか」 ようやく、森が俺を見る。 「心当たりっていうか、人形貰ったんだけどそれでちょっと不思議なことがあった。後ろ向けたはずなのに、いつの間にか俺の方見てた」 早朝のことを思い出し、俺は言う。怖かったというのは何だかかっこ悪くて、不思議という言葉で誤魔化した。 森は腕を組み、深く息を吐く。 「それ、俺が貰ってもいいか。知り合いに頼んでお祓いしてもらう」 仁美ちゃんには悪いが、俺は頷いた。怖い思いはしたくない。 早速明日の昼には引き取ってもらうことにして、その日は別れた。 [戻る] [しおりを挟む] |