5 目を覚ますと目の前に田沼がいた。思わず、間抜けな叫び声を上げると田沼が目を覚ます。 「なんでお前、俺の布団に入ってんだ!」 布団から田沼を蹴り出す。 おてて繋いで添い寝とかつらい。女の子ともしたことないのに、初めてが田沼つーか男だなんて泣きたい。 「上原がオレの手離さないからじゃん。なんなのこの仕打ち。ひどい」 泣いたフリをする田沼を放置し、布団を畳む。点滅するケータイを開けば、メールが来ていた。たぶん、森だろう。 2時に喫茶店に待ち合わせでいいか? という内容だった。それに、承諾メールを送る。今は12時過ぎだからまだ時間があった。 俺に相手にされなかった田沼はむくれながら、俺を見ている。 「はいはい、悪かったよ」 言いながら、布団を畳む。投げやりなもの俺の物言いに、田沼は頬を膨らました。 全然、可愛くないからな。 「どっか行くの?」 布団を隅に置く俺に、田沼が聞いてきた。頷くとそっか、と呟くようにゴロンと床に寝転ぶ。そちらに目を向けた。何か言いたそうな顔をしているが、何も言ってこない。 「なんだよ」 声を掛けるが、首を横に振り俺に背を向けた。 拗ねてるんだろうか。どうにも様子がおかしい。何かあったのか聞くべきだろうか。でも、無理に聞きださない方がいいのだろうか。 なんて考えているうちに、出かける時間が来た。明日も様子がおかしかったら聞いてみようか、と思いつつ俺は田沼の部屋を後にする。 [戻る] [しおりを挟む] |