愛染 | ナノ




 いつも通りにコンビニのバイトに勤しんでいた。
 田沼はといえば、今日も女の子と遊ぶらしい。こっちはバイト詰めだというのに、いい身分だ。禿げろイケメン。
 完全に客足が引いた時に、先輩が寄ってきた。
「合コンの話なんだけどさ。来週の水曜日とか大丈夫か?」
 合コン……?
 一瞬なんの事か忘れていたが、思い出す。先輩の妹さんが、俺の事を気になってるだとか言っていたけか。
 ここ最近いろいろありすぎて、完全に忘れていた。
「夏休みだしさ。妹も寮から帰ってきてるし、来週の水曜日はお前もシフト入ってなかっただろ」
 確信を持って、言われる。わざわざ確認をしてくれたんだろうか。確かに入ってなかった気がする。それに、特に予定もなかったはずだ。いや、暇じゃないけど予定はないってだけだ。
 俺は誰に言い訳してるんだろうか。
「はい、大丈夫ですよ」
 頷き、承諾する。
 先輩は嬉しそうに俺の背中を叩いた。
 地味に痛い。
「じゃあ、また詳しいこと決まったら連絡するわ」
 最後に肩をポンポンと叩かれる。
 先輩は力の加減というものを知らないのかもしれない。だから痛いですって。
 俺が恨めしそうな顔をしているのにも気付かず、先輩はバックヤードへと消えた。

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