愛染 | ナノ




結局俺は田沼に引き摺られるようにして、近くの墓地に連れていかれた。心霊スポットではなかったのが、唯一の救いだ。
夜の墓地は、不気味だと思う。昼間だって不気味だが、比じゃない。
「すげえ。雰囲気でてるなー」
何がそんなに楽しいのか、目を輝かせて笑っている。罰当たりなヤツだ。マジで罰が当たらないだろうか、もちろん田沼にだけ。
帰りたい。非常に帰りたい。いや、ビビてるわけじゃないぞ。ただ不謹慎だろ! 沢山の方が眠っているところで、肝試しなんてしたら駄目だろ。
「さあ、行くか上原」
言って、田沼は歩き出した。
置いてかれるのもアレなので、田沼の後に続く。別にビビってないぞ。頭の中で、子供の頃に歌ったお化けなんてないさ〜とBGMが流れる。
風の音と木が揺れる音、少し離れたところからは、車の走る音が聞こえる。
あまり見るのも失礼だろうと墓石を見ないように、田沼の腰の辺りをジッと見つめる。別にケツを狙っているわけじゃない。俺はノーマルだ。女の子が大好きだ。

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