2 講義に向かうため足を速めた瞬間、声を掛けられ肩を掴まれる。 振り返ると森がいた。それはもう、怖い怖い顔をした森がいた。 「お前なんで連絡つかなかったんだ?」 咎めるような口調 。とても、般若みたいな顔をしてどうした? なんて聞けそうにない。 「いや、あの、ケータイが壊れて……」 「心配した。あのあといきなり電話切れるし、連絡とれなくなるし。アパート行ったらパトカー止まってるしで。あのチャラいのに聞いても答えないし」 捲くし立てるように、森が言う。どうやら、心配してくれたらしい。 「俺は霊視なんて出来ないんだからな。ふざけんなよ。謝れ。俺と逢沢に謝れ」 腕を組み、俺を見下ろして言う。相当腹を立てているらしい。 「いや、あのごめんなさい」 「よし、逢沢のところに行くぞ」 有無を言わせぬ森に、俺は抵抗することなくついていく。 いつも通り、食堂の片隅に逢沢さんはいた。俺を見るなり、ホッとしたような顔をする 。 「あの、心配かけてごめんなさい」 「ううん。無事でよかった」 ギュッと手を掴まれて、ドキッとした。女の子に手を握られたことなんてなかったし、逢沢の手が凄く冷たかった。 逢沢さんの手が離れ、体温が戻ってくる。 「ホッとしたら疲れちゃった。今日はもう帰るね。また明日」 手を振り、逢沢さんは食堂から出ていった。 「お前、講義は?」 チラリと時計を見て、森が言う。 お前のせいで間に合わない、などと言えるわけもない。 「2コマ目から」 [戻る] [しおりを挟む] |