愛染 | ナノ

10


 病院で首の怪我の処置をされてすぐ、警察署で事情聴取された。解放されたのは太陽の位置が高くなってからだった。また話を聴かせて欲しいと言われた。
 柏木は、血の気を無くしたままご両親と一緒に帰っていった。
 柏木の彼女さんは――助からなかったらしい。
 俺はというと、ずっと田沼と一緒にいた。田沼はあまり関係ないのに、聴取の時も一緒にいてくれた。今思うと少し恥ずかしい。
 喧嘩したのが嘘みたいに、普通に接してくれている。その上、家に泊めてくれるらしい。
「ごめん」
 田沼の住むアパートに向かう途中、俺は田沼に謝る。
「何が?」
 ふわりと笑って、田沼が首を傾げた。
 解ってるくせに。
「ありがとう」
 ボソリと言うと、田沼は頷いた。

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