愛染 | ナノ




 3日後、柏木の彼女だという女の子が訪ねて来た。 どうやら田沼とも知り合いらしく、田沼に俺の部屋を聞いたらしい。
 彼女も隈が酷い。
 俺は、席を外した方がいいんだろうか。いたら、邪魔だよな。
「俺はコンビニ行ってくるね」
 遠慮する2人を残し、外に出る。雨が降っていた。
 ビニール傘を差し、ゆっくりと歩きだす。
 何の話かな。どれくらい時間掛かるだろうか。ケータイで時間を確認しする。1時間くらい時間を潰せば、大丈夫だろうか。
 近所のコンビニは、バイト先だ。バイト先で暇を潰すというのは、ちょっと気まずい。
「あれ? 上原、今日のシフト終わったんじゃなかった?」
 店内に入るなり、目を丸くされた。
 店員2人を見て安心する。良かった。気さくな先輩と同じ大学の奴だ。
「ちょっと暇潰し」
 店内に客がいないのか、先輩が近寄ってきた。
「上原。今度合コン来てよ?」
 唐突な誘いに、目を見開く。先輩から合コンに誘われるのは初めてだ。数合わせだろうか。
「この前、碧学の学祭行っただろ? 妹が碧学なんだけど、お前のことが気になるって言ってんの」
 え? 間抜けな声が出た。
 森か田沼と勘違いしてるんじゃないだろうか。いや、だってそんな――
「毎日のようにお前の事話してくんだぜ。自分の演奏中に倒れたとか、大丈夫だったかなとか」
 ニヤニヤと話す先輩に、少し上がった期待が落ちた。
 それ別の意味で気になるんじゃあ……。
「兄としては何とかしてやりたいわけですよ」
 先輩の笑顔に、俺は何も言えなくなり頷いた。
「じゃあよろしく!」
 肩を叩かれ、もう一度頷く。
「いいなぁ。おれも連れてって下さいよー」
「やだ。お前、チャラいもん」
「えーそんなことないっすよー」
 2人の漫才を聞いている内に、結構時間が経っていたらしい。
 3人分飲み物を買って、アパートに戻る。

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