愛染 | ナノ




 外は薄暗くなっている。 俺達は何も話すことなく、泊まるための準備をして俺のアパートに帰った。
 部屋に入るとようやくホッと息を吐くことが出来た。
「腹、減らない?」
 安心したらなんだか腹が減ってきて、俺は柏木に聞く。
「えっ……ああ。減ったかも」
 呆けていたのか、一瞬キョトンとしたがすぐに笑顔で頷いた。
「じゃあ、ちょっと簡単なもの作るから座ってて」
「いや、おれも手伝うよ」
 台所に立つと隣に柏木がつ。
「ありがと」
 2人であーだこーだ言いながらサンドイッチを作った。
 サンドイッチ作りに器用も不器用もないかもしれないが、柏木は器用だった。しかも丁寧だから、俺が作ったサンドイッチとは、見た目が全然違う。
 2人でそのサンドイッチを食って、テレビ見てのんびりしてその日を過ごした。
 それから1週間、ストーカーからの音沙汰はなかった。
 手紙もないし、メールも来ない。俺の部屋の扉が、ノックされることもなかった。
 もうストーカー行為を諦めたのか、まだ判らないから俺の部屋で寝泊まりしている。
 柏木も最初は寝てもすぐに魘されて起きていたが、最近はその頻度が減った。まだまだ隈は酷いけど、以前よりは身体の調子はいいみたいだ。
 でも――なんだか、嵐の前の静けさのようで、気味が悪い。そんなこと、柏木には言えないけれど。

[ 33/68 ]

[*prev] [next#]
[戻る]
[しおりを挟む]
以下広告↓
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -