7 目が覚めると木の葉が風で揺れていた。その隙間からチラチラと青い空が見える。 どうやらベンチで寝ていたらしい。 「起きたか」 森の声が頭の方から聞こえ、顔を上に向けると文庫本を持った森と目があった。 「演奏中に寝たかと思ったら、魘されてるから流石に出てきた」 起こしても起きなかったからな、と苦笑混じりに言う。 ハッとして起き上がる。周りを見回すが、田沼はいない。 これが夢なのか現実なのかわからない。 「まだ寝惚けてるのか」 周りをキョロキョロとする俺に、森は俺の頬をつねって言う。 痛い。 抵抗すると森は頬から手を話し、俺の頭を撫でる。 「おい、何すんだよ」 大の男が同じ男に頭を撫でられるなんて耐えられない。絵的にも勘弁してほしい。 「もう少し周りに気を付けろ。言っただろ、気を付けろって」 頭を撫でていた手が、乱暴になった。朝セットした髪型が崩れる。 「だから何にだよ」 手ぐしで髪を直し、森を見た。 「周りだよ。要するに全部」 範囲広すぎだろ。 「もうちょいヒント」 「クイズじゃねぇよ」 額にデコピンされ、地味に痛い。つか、骨痛いマジで。 痛みをまぎらわすために額を擦る。 ふと手首に人に掴まれたような痣があることに気付いた。この左手首は田沼に掴まれた方だ。 ゾワゾワと背中が寒くなった。 まだ、梅雨は明けないらしい。 [戻る] [しおりを挟む] |