6 目が覚めると台所に立っていた。夕飯の支度をしながらボーッとしていたらしい。 ふと後ろを見ると田沼が立っていた。手にはナイフが握られている。 勢いよく、こちらに向かってきた。俺は包丁を手に取り、田沼に向ける。 包丁を持った両手に手応えを感じた。少しして、下腹部に激痛が走る。そこだけが熱く感じられ、脂汗が全身から――全毛穴から吹き出した。 目が覚めるとお湯の張られた湯船の中にいた。どうやら入浴中に寝てしまったらしい。 ふと横に目を向けると田沼が立っていた。 いきなり頭を掴まれ、そのままお湯に沈められる。 もがくとお湯が鼻や口から入った。 このままだと殺される。 必死に何かを掴み、引っ張る。何度も何度も引っ張るうちに、田沼の手の力が弛んだ。 すぐにお湯から顔を上げ、咳き込みながら何かを掴んでいる手を見る。手には田沼の後頭部の髪を掴んでいたようだ。 そのまま湯船のへりに田沼の頭を何度も何度もぶつける。 こうしなきゃ――殺さなきゃ、俺が殺される。 口から、呪詛を唱えるように死ねと何度も呟いた。 手の中の田沼はぐったりとして動かない。 ようやく安堵出来て、手を離した。顔が潰れて真っ赤な液体で完全に誰だかわからない。 完全に、息を止めれただろう。 ほっと息を吐いて、浴室を後にした。身体を拭いて服を着る。 髪を乾かすために洗面台に近付き、鏡を見ると赤い何かが俺の後ろに立っていた。 まだ、生きていた。 素早く振り返り、ドライヤーの電気コードで首を絞める。必死に左右に引っ張るとまたぐったりとした。 まだ死んでいないかもしれない。そう思うと安心が出来ない。 近くに鋸があった。それを掴み、首に当てると思い切り引く。嫌な音と共に、血が鯨の潮のように噴き出した。 [戻る] [しおりを挟む] |