5 目が覚めると見慣れた天井が目の前にあった。身体を起こすとベッドの上だ。 随分、リアルな夢を見ていた気がする。 携帯を開くとまだ午前二時だった。嫌な時間に起きたらしい。 ふと隣で動く気配がした。そちらを見ると田沼がこちらに背を向けて座っている。 そういえば、また泊めたっけか。 「田沼、眠れないのか?」 声を掛けても反応はない。 おいおい、まさか座って寝てるんじゃないだろうな。 ベッドから足だけ下ろし、田沼の方に身体を向ける。肩をトントンと叩いても、田沼は振り返らない。 マジで座ったまま寝てるのかもしれない。 「そんなんじゃからだ痛めるぞ」 立ち上がり、前に回り込むといきなり手首を掴まれ、引き倒される。 勢いよく倒れ込み、テレビを置いていた棚の角で後頭部を打った。 激痛とともに目の前がチカチカして吐き気がする。 文句を言おうと田沼を見上げると、目を血走らせ、興奮したようにフーッフーッと息を漏らしていた。 ヒッと喉から音が漏れ、背筋に嫌な汗が流れる。 これは、田沼なのか? 「た、ぬま?」 墓場での一件を思い出し、掠れた声しか出なかったが、田沼を呼ぶ。 名前を呼んだらきっと、何? なんていつも通り聞いてくるはず。 根拠のない期待を込めた目で見上げるが、目は血走ったままだ。 田沼は更に息を荒げ、俺の首を両手で包んだ。 嫌な予感がして、田沼の手を外そうと手首を掴む。 全く外れない。それだけでなく、俺の太腿の上にのし掛かられた。そしてそのまま指に力を入れてきた。 ギリギリと絞められる。俺は必死に暴れるが、太腿に乗られているせいか身動きがうまくできない。 目の前がまたチカチカしてくる。俺は必死に田沼の腕を殴るが、全然効かない。腕だけじゃなく、側頭部も殴ったが、これも効かない。 このままじゃ死ぬ。片手を床や机に這わす。 何か尖ったものが当たり、それを掴んだ。田沼の肩越しにそれを見るとハサミだった。 それを必死に掴み直し、思い切り振り下ろした。 [戻る] [しおりを挟む] |