愛染 | ナノ




 優深ちゃんが案内してくれたのは、ホールだった。そこは多目的ホールらしく、この学園祭ではピアノの発表会に使われているらしい。
 多分、俺たち庶民でいう有志バンドのライブようなものをやっているんだろう。ピアノの発表会とか流石(元ではあるが)お嬢様学校だ。
 このピアノの発表会には、優深ちゃんも出るらしい。俺たちを案内し終わると控え室のあるほうに行ってしまった。
 ホール内は、もちろん広いかった。舞台中央にポツンとグランドピアノが置かれている。
 入場前に貰ったパンフレットを見ると今、三人目が終わったところらしい。
 優深ちゃんは五人目らしいので、一人知らない人の発表を聞くらしい。
 正直、俺は普段こういうのに縁がないので、寝てしまわないか心配だ。
 一人そんなことを危惧していると拍手が響いた。どうやら四人目が出てきたらしい。長い黒髪で、前髪がぱっつんの女の子だった。
 ピアノの横まで来ると彼女は礼をした。瞬間、ピンッと緊張した空気が身体を包む。
 息が詰まりそうな緊張感の中、彼女はピアノの前に座り、ゆっくりと鍵盤の上に手を置いた。
 ピンッとはった緊張感の中、水が波ひとつない水面に落ちるようにピアノの音が響いた。

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