愛染 | ナノ




 次の日、文化祭に行く準備をしているとインターホンがなった。一瞬森かと思ったが、森に俺の家を教えた覚えはないから違うだろう。
「来ちゃった」
 扉を開けたらそこには、可愛い彼女がっ!
 なんてことはなく、田沼が満面の笑みを浮かべて立っていた。何だかイラッとしたので扉を閉めようとしたが、スルリと部屋の中に入ってきた。
「帰れ」
 部屋に上げるのは阻止するように、言う。
「えー遊ぼうよぉ」
 不満そうに頬を膨らます。全っ然可愛くないからな、それ。
「俺は今から約束があんの」
「は? 誰と?」
 いきなり無表情になり、いつもよりトーンの低い声になった。何故か田沼は怒ってるらしい。
 いや、無下に扱われたことに怒ったのかもしれない。
「柏木? 森ってやつ? それとも前話してたさくらちゃん?」
 俺の友人の名前を上げて聴いてくる。
「誰と文化祭行くの?」
 文化祭、という言葉に思わず目を見開いた。
「え? 何で知ってんだよ?」
 俺、田沼に行ったけ?
「昨日、財布の端から見えた。大事そうにしてたから、目に入った。そんな事より誰と行くの?」
 あー一緒にファミレス行った時か。金出すときに一緒に出しちゃったから、そんときに見えたのか。
「森だよ」
 しつこく聞いてくる田沼に、答えてやる。
「ふうん……俺も行く」
「は? チケットは?」
 俺はチケット一枚しか持ってないぞ。森に言ったら何とかなるかな?
「あるよ。この前、合コンしたときOGの子がいてさ。貰ったんだ」
 ほら、と言い見せてくる。ピラピラと揺らされている紙は、確かに文化祭チケットだ。
 あるなら、いいか。
 一応、森には報告しておくためにメールをした。

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