2 次の日、文化祭に行く準備をしているとインターホンがなった。一瞬森かと思ったが、森に俺の家を教えた覚えはないから違うだろう。 「来ちゃった」 扉を開けたらそこには、可愛い彼女がっ! なんてことはなく、田沼が満面の笑みを浮かべて立っていた。何だかイラッとしたので扉を閉めようとしたが、スルリと部屋の中に入ってきた。 「帰れ」 部屋に上げるのは阻止するように、言う。 「えー遊ぼうよぉ」 不満そうに頬を膨らます。全っ然可愛くないからな、それ。 「俺は今から約束があんの」 「は? 誰と?」 いきなり無表情になり、いつもよりトーンの低い声になった。何故か田沼は怒ってるらしい。 いや、無下に扱われたことに怒ったのかもしれない。 「柏木? 森ってやつ? それとも前話してたさくらちゃん?」 俺の友人の名前を上げて聴いてくる。 「誰と文化祭行くの?」 文化祭、という言葉に思わず目を見開いた。 「え? 何で知ってんだよ?」 俺、田沼に行ったけ? 「昨日、財布の端から見えた。大事そうにしてたから、目に入った。そんな事より誰と行くの?」 あー一緒にファミレス行った時か。金出すときに一緒に出しちゃったから、そんときに見えたのか。 「森だよ」 しつこく聞いてくる田沼に、答えてやる。 「ふうん……俺も行く」 「は? チケットは?」 俺はチケット一枚しか持ってないぞ。森に言ったら何とかなるかな? 「あるよ。この前、合コンしたときOGの子がいてさ。貰ったんだ」 ほら、と言い見せてくる。ピラピラと揺らされている紙は、確かに文化祭チケットだ。 あるなら、いいか。 一応、森には報告しておくためにメールをした。 [戻る] [しおりを挟む] |