1 ゴールデンウィークの一件以来、変なものを見るようになった。 イケメンの身体に巻きつく不気味な女とか、血だらけの女の子とか、ビルから何度も繰り返し落ちてくる男とか……。 気のせいだと信じたいが、こう毎日のように変なものを見るともうこれは見えるようになったのだろう。幽霊とやらを。 深夜のコンビニのバイト中、客も居なくて暇だなあなんて欠伸を噛み殺さずに吐き出すと自動ドアが開いた。いらっしゃいませ、と声を掛けようとしてその異様な光景に声を掛けられなかった。 雨なんか降ってないのに、ずぶ濡れの赤いレインコートを着た女が入ってきた。店長を呼ぼうかとも思ったが、見えない人に言っても俺がおかしいと思われるだけだ。ここは早々にお帰りいただけるように祈るしかない。 女はカウンターに近づくとじっと俺を見てくる。俺は見えない振りをしてカウンターフードの廃棄作業をする。 それにしても、よく二十歳までに見なければ、一生見ないなんて言うけどあんなのは嘘ってことらしい。そんなの考えた奴は多分見れない人だったんだろう。ただ、今そいつをぶん殴ってやりたい気分だ。逆恨みもいいところだが、そんな気分だ。だってやってられない。勘弁して欲しい。 [戻る] [しおりを挟む] |