8 頬を強く叩かれ、俺は目を覚ました。 頭はもう痛くないが、未だ掴まれたままだ。 「思い出したかい?」 「かっちゃん」 名前を呼ぶとようやく、かっちゃんは無表情から笑顔になった。 頭を掴んでいた手が、ゆっくりと離される。 「良太。私はね、約束を守らない子は嫌いだよ」 笑顔のまま、頭を撫でられる。またいつ頭を掴まれるか、と思うと身構えてしまう。 「ごめんなさい」 膝ががくがくと震える。こわい。この方をこれ以上怒らせてはいけない。 「そんなに怯えないで。大丈夫。もう怒ってないよ。君の顔を見たら、もうよくなった」 頭を撫でていた手が、緩慢な動きで頬を撫でる。血の気が引いていくのがわかった。 どうしようもなく、こわい。生理的に涙が溢れてくる。 吐き気も襲い、必死に唇を噛んで誤魔化す。 「死相が出ている。近いうち君は死ぬんだね。私は神だけど、死神ではないからよくはわからないけどね」 心底嬉しそうに、かっちゃんは言う。 神に、死ぬ、なんて言われて冷静でいられるはずもなく、足の力が完全に抜けた。崩れ落ちそうになった俺をかっちゃんが腕を掴んで支える。 「さて、お迎えが来たようだ。彼はきっとこれから君の助けになってくれるよ。鈴の鳴るほうへお行き。私は、君が死ぬまでここで待ってるよ。今度は約束を守ってね」 かっちゃんはまた俺の頭を撫でると手を離し、俺の背中を押す。 早々にここから離れたかった俺は、言われた通り鈴の鳴るほうへ走った。 [戻る] [しおりを挟む] |