7 蝉が大合唱する中、俺は鳥居の行列を走って越していく。鳥居を抜けると神社が見えた。その裏まで走ると、そこには20歳くらいの青年がしゃがんでいた。 「かっちゃん、あそぼ!」 手を差し出すとかっちゃんはその手を掴み、うん! と頷く。 「今日もお父さんとお母さんはお仕事?」 手を繋いだまま歩く。今日は何をしよう。かっちゃんが、俺の顔を覗き込み言った。俺は頷く。 「寂しいね」 「寂しくないよ。かっちゃんがいる」 俺の言葉にかっちゃんは嬉しそうに笑みを浮かべた。 「私もね。良太がいるから寂しくないよ」 こうして遊んでくれるしね。 言って俺の頭を撫でる。 「じゃあ、毎日遊ぼう!」 俺はかっちゃんに頭を撫でられるのが大好きで、そう言った。 「うん、そうだね。約束だよ?」 うん! と頷くとまた頭を撫でてくれた。 それから一ヵ月後、父の仕事の都合でこの町を離れた。かっちゃんには、そのことを最後まで言えなかったんだ。 [戻る] [しおりを挟む] |