愛染 | ナノ




 案の定女子2人は、イケメン2人にべったりだ。
 おいおい、田沼は性格悪いぞ。いいヤツだけど、地味な嫌がらせしてくるからな。
 柏木は……知らん。
 いや、いいヤツっぽい。さっきから俺も会話に入れてくれようと話を振ってくれている。その優しさが痛い。
 ほら、女子はお前と喋りたそうじゃん。俺、完全に邪魔者じゃん。
 田沼は俺たちのことを気にせず、女子と話している。
お前はそういうヤツだよな。
着いた先は山の中の温泉旅館だった。その温泉旅館以外は山と川しかない。
 田沼のチョイスにしては、辺鄙なところだった。
 いつもなら、人が多そうな場所に連れていかれる。
「田沼くん、なんにもないじゃん」
 女子の1人が抗議の声を上げる。
「たまにはいいじゃん、こういう何もないとこ。後で散策しようよ」
 小学生のような笑顔で、田沼は川の方を指差した。
 荷物を部屋に置いて、すぐに外に出る。
 5月上旬だというのに、夏のような暑さだ。
 2人ずつで並んで歩き出した。もちろん俺は1人で一番後ろを歩いている。
 歩いているうちに、道が木陰になってきた。日差しを防げるだけで、涼しく感じる。
「あれ、鳥居じゃない?」
 女子の一人が指を森の方を指差した。
 古びた朱色の鳥居がひっそりと立っている。
「おれ、ああいうの好き」
 柏木がボソリ、と言った。
 意味がわからない。ただの鳥居だろ?
「じゃあ行ってみよ」
 田沼は言うと歩き出した。俺たちはそれについていく。
 鳥居の近くまで寄ってみるとそれが何基も一列に並び道になっていた。
「お稲荷さんかな?」
 柏木が奥を覗き込むように言う。俺も同じように覗き込むが見えるのは鳥居だけだった。神社はもっと奥の様だ。
 何だか懐かしい気がする。吸い込まれるような錯覚がして、思わず頭を振った。連日バイト続きだったから、疲れているのかもしれない。
「行きたいんだけど、いい?」
 控えめに、柏木が言う。田沼が行こうと言って鳥居を越す。イケメン二人が入っていくと女子二人もその後を追った。俺もその後を続いた。

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