Foodシリーズ | ナノ

フランクフルト


 頬に強い衝撃を感じ、パッと目を開く。パッと目に入った光が眩しくて、目を細めた。
 じんじんと痛む頬に手をやり、状況を判断しようと身体を起こそうとする。しかし、身体が拘束されているらしく、それは叶わなかった。仕方なく頭だけを動かす。どうやら僕は手術着を着ているらしい。
 僕は、事故にでもあったのだろうか。少し痛む身体に、自身の記憶を遡る。確か、昔の同僚に会って、それから……。
 ふと僕のすぐそばに誰かが立っている。僕を覗き込むように、その誰かは近づいてきた。逆光で、誰だかわからない。それでも眩しかった照明がその頭で隠れたことに、心の中で感謝する。
「久しぶりね」
 ハスキーな女性な声だ。その声に似た、記憶の中の女性を脳内で検索するが、見つからない。
「え、と……」
 申し訳ないが、名前を教えてくれないかと言おうと口を開いた瞬間、口を手で塞がれた。
「あーいい。喋るな。あまりあんたの声は聞きたくない」
 彼女はそういうと僕の口を塞いだまま、手術着を剥ぎ取った。何をするのかとギョッと目を見開くが、彼女は気にした様子もない。
「ほら、見て」
 彼女はそう言うとようやく僕の口を離した。そして僕の頭を持上げる。自然と僕の身体が見える。
「え」
 僕の下半身に、あるはずのものが見えない。縫合痕が、下腹部に残っているだけだった。
「え?」
 僕がもう一度間抜けな声を上げ、恐怖に震えだすと、彼女が笑い出した。
 彼女の方に目をやり、彼女が昔いた研究室の被験体だということが判った。第三次世界大戦直前、バイオ兵器を作る為、彼女には、受精卵の頃から実験を行っていた。
 受精卵の頃から肉体強化のために、あらゆる実験が行われ、彼女が子供に成長する頃には脳のリミッターを人工的に外してやり、所謂火事場の馬鹿力を常に引き出せるようにした。更には、自然治癒能力を上げるようにしてやり、バイオ兵器へ作り上げた。この実験にはたくさんの犠牲が余儀なくされたが、彼女は数少ない成功例といったところだ。残念なことに第三次大戦が勃発される前に、世界が統一されてしまったため、彼女は戦場で輝くことはなかったが。
 しかし、なぜ、彼女がここにいるのか。被験体は、いや、被験体だけでなくその実験があった事実すら、全て、消し去られたはずだ。これは、どういうことなのか。
 目を見開く僕を見下ろし、彼女も手術着を取った。
「これ、あんたの粗末なものよ。ね、見覚えがあるでしょ?」
 ペタペタと陰茎を僕の頬に押し付ける。さっきから、心臓が騒がしい。これは一体どういうことなのか。顔を背けると、顎を掴まれて彼女の方へと顔を向かされる。亀頭を唇に押し付けられ、嫌悪に顔を顰める。
 胃の辺りに力が入り、酸がせり上がってきた。グッと喉の奥で音が鳴ると、彼女は異変に気付いたのか僕から手を離して少し離れる。瞬間、僕は首を横に向けて、吐き出した。消化され切っていない胃の中のものと胃液交じりで黄色掛かったそれは、酸っぱい臭いと味がして、更に吐き気を催す。
 一頻り吐き出すと、ようやく落ち着いてきた。涙と鼻水、そして嘔吐物でぐしゃぐしゃになった顔を拭いたいが、手が拘束されていて叶わない。
「汚い」
 彼女はそう吐き捨てるように言うとタオルで僕の顔を拭い、更にベッドも拭っていく。汚いタオルを投げ捨てると、また僕の口元に陰茎を近づけてきた。
「舐めて」
 顔を顰めて反らすが、彼女はベッドに乗り上げて僕の胸部の上に座った。そのまま頭を抑え込まれ、唇に先端を当てる。無理矢理口の中へと突っ込むように、押し付けてきた。グッと入り込んできた亀頭に、舌や口内が当たらないように口を大きく開ける。
 大きく開けた口の更に奥、喉へと押し付けられる。嘔吐く僕を見下ろして、彼女は腰を揺らした。彼女が腰を揺らす度に、二つの乳房が揺れる。
 苦しくて顔を背けると、少し頭を擡げ始めた陰茎が口の中から飛び出した。咳き込む僕を見下ろし、彼女を再度、僕の顎を掴み口の中に入れる。
「苦しいならわかるでしょ?」
 子供に言い聞かせるような口調で、彼女は言う。
 渋々、それでも抵抗のため小さく口を開くとこじ開けるように、陰茎が入ってきた。
 陰茎を口に入れている、それが自身のモノであることも相まって、嫌悪に吐き気を催す。
 舐めろ、という様に舌を雁で引っ掻かれた。舌が触れる度に、気持ちがいいのか吐息が漏れている。
 完全に勃ち上がったそれをようやく僕の口から引き抜いた。更にベッドからゆっくりと下りる。
 咳き込む僕を尻目に、彼女は僕の拘束された足を解いた。足蹴にしようと動かしたが、それを簡単に止められ、身体を二つ折りにされ、更に大股を開いた形でまた拘束された。キツイ体勢に、息が漏れる。
 彼女は僕の臀裂を左右に開き、肛門に、何かを当てる。
 ヒュッと喉から音がなると彼女は笑顔を浮かべた。グッと肛門をこじ開けるように、なにかが侵入してきた。
 身体が避けるような痛みに、目の前がチカチカする。
「ねえ。イイコト教えてあげましょうか。実はね。あんたのここにね――」
 彼女はそこで一旦言葉を溜めて、僕の下腹部、丁度脚の付け根の少し上の辺りを指さした。そして、更に続ける。
「子宮を作ってもらったの。あんたの細胞と万能細胞だったけ? から出来た卵子もあるから……妊娠しちゃうかもね」
 僕の耳元で、彼女が至極愉快そうに囁く。彼女の身体が密着し、臀部に彼女の太腿が当たり、肛門の中のなにかもグッと更に奥へ入ってきた。
 あまりの苦しさと激痛に、僕は口をパクパクと開閉を繰り返す。
「ねえ。あんたの卵子とあんたの精子で、あんたが妊娠したら、それってとっても素敵じゃない? 最高の復讐だと思わない?」
 彼女は口を饒舌に動かしながら、腰の動きも激しくしてきた。
「ねえ、今どんな気持ちかしら?」
 小首を傾げ、腹の奥を突く。
 返事も出来ずに「うっ」と苦しげな声を漏らす、僕を見下ろし、彼女は唇に弧を描く。その唇を僕のそれへとチュッと音を立てながら当てた。そうして、また嗤う。
「泣いたって、許してあげないわよ。あんたもそうだったでしょう」
 自然と涙が出てきていたらしい。それを自覚すると、今度は嗚咽まで口から漏れだす。
 彼女の嘲笑と僕の嗚咽が混ざって響く、この時計のない部屋で、僕はこの地獄が早く終わることを願った。
 声が掠れてきたところで、ようやく彼女が吐精する。僕の陰茎をゆっくりと引き抜くと、まだ少し勃起しているそれを僕に見せつけてきた。
 また、胃液がせり上がってきて、黄色いそれが吐き出される。
 彼女は僕の髪の毛を掴んで頭を固定すると目の前で、陰嚢を握った。
 何をするのかと目を瞠った瞬間、彼女は指に力を入れた。耳を劈くような悲鳴を上げ、彼女は、陰嚢を握り潰す。
 血液と、その他液体が僕の顔に掛かった。
 彼女は涙と鼻水でぐちゃぐちゃな顔を僕に向け、嗤う。色々な液体に塗れた手で、その液体を僕の顔に塗りたくった。今度は陰茎に指を絡めるとブチりと音を立てながら、引き抜く。
 悲鳴を上げ、苦しむ彼女は息も絶え絶えに、引き抜いたそれを僕の口へと押し付けた。頑なに口を閉じていると諦めたのか。彼女は白い顔をして、僕から離れていく。そうして、僕の拘束を外すことなく、彼女は部屋を出て行った。
2015.11.25

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