こっそり | ナノ

幸せになりたい2

 数日後、ぼくは赤ちゃんと小さな女の子の2人を拾った。物みたいな言い方は嫌いだけど、学のないぼくにはこれしか浮かばなかった。
 繁華街からの帰りだった。視線を感じてそちらを見れば、彼女たちがいたのだ。
 姉弟かと聞いたら、血は繋がってないと小さな女の子は言った。
 おいでと誘うと彼女らもおずおずとついてきた。
「ロリコン?」
「……興味ない」
 小さな女の子からそんな言葉が出るなんて、驚いた。
 それにしても、ぼくはそんなに変態に見えるんだろうか。本当に心外だ。
 また、あのラブホテルに向かった。
 部屋に入ると女の子の啜り泣く声が聞こえる。
 思わずため息が出た。
 この辺りのラブホテルでは、よくあることだ。
 金持ちには待遇がいいが、相手が金を持っていない人間だと扱いがぞんざいになる。
 例えば、まだ部屋に残っているのに客を通す、なんてことはよくある。
 部屋の中に入ると啜り泣いていたのは、つばさだった。
 ぼくを見るなり、慌てて涙を拭う。
「……4人で、暮らそうか」
 唐突な言葉に、小さな女の子とつばさはぼくを見る。
 こうしてぼくらの奇妙な家族ごっこが始まった。
 名前がなかった赤ちゃんと小さな女の子に、ぼくとつばさは名前を付ける。
 小さな女の子には、みらい。赤ちゃんには、のぞむ。
 働くのはぼくだけでいいと言ったのに、つばさは働くと言って利かなかった。
 確かに、ぼくの収入だけじゃあ生活はできない。ただ、ウリなんてして欲しくなかった。泣くほど嫌なのに、それをやれなんて言えない。
 働いて、働いて、それでも生活は苦しかった。でも、幸せだ、と思う。
 思ってた。
 思いたかった。
 したかった。
 ぼくは、みらいとのぞむに手をあげたんだ。疲れていた、なんて言い訳だ。
 泣き叫ぶのぞむの声に、ハッとする。
 みらいは、かろうじて泣いてはいなかったが怯えていた。
 一番、嫌っていた事をぼくは自らやったんだ。
 いたい。父さんに殴られるより、いたかった。
 許してもらえないのを承知で、ぼくは泣きながら謝る。
 つばさが帰ってくるまで、ぼくはごめんなさいを繰り返していた。
 ぼくが悪いのに、みらいはぼくを庇う。
「みらいがわるいの。だから捨てないでッ!」
 その日は4人で泣いた。
 結局、ぼくらの傷の舐め合い生活は、続く。ぼくらは、お互いに依存しているんだ。
 どれだけ頑張ったら幸せは手にはいりますか。
2010.01.04

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