こっそり | ナノ

幸せになりたい1

 ぼくらは、ただ幸せになりたかったんだ。  廃墟ばかりある廃れた街。そこは、貧乏人やストリートチルドレンだらけだ。
 そこから少し出ると賑やかな繁華街がある。そこには、金持ちがあぐらをかいている。
 貧乏人やストリートチルドレンの仕事なんて、まともなのはない。
 ウリや奴隷、そんなものばかり。ぼくは、奴隷。生きていくためには、それしかない。暴力は痛いけど、親からの暴力より、いたくない。
 働いて稼いで、口答えしなければ、いたくない。怖くない。
 繁華街から廃れたこの街に戻る途中、若い女の子が躊躇い気味に近づいてきた。
「あの、いくらで……買ってくれますか?」
 ウリだ。
 ぼくが繁華街から来たから、金持ちの変態と間違われたんだろう。心外だけれど、きっと初めてなんだ。
 親に言われて、泣く泣く来たんだと思う。目元が赤い。頬も赤く腫れてる。
「金、ないよ」
 ぼくの言葉にホッとしたような顔をする。嫌、なんだ。当たり前だけれど。
「……来なよ」
 女の子の顔が強張る。
 ぼくは気にせず歩き出すと女の子は、おずおずとついてきた。
 ラブホテルに着くと女の子は、いよいよ泣きそうな顔をする。
 部屋に入るとぼくはベッドに身体を沈める。久しぶりのベッドは、ふかふかだった。
「わ、わたし……初めてで、どうしたら、いいですか……?」
 女の子に顔を向けるとビクリと肩が揺れた。
 ぼくは空いている右側を叩く。女の子はゆっくりと近付き、ベッドに座る。
「おやすみ」
 ぼくの言葉に弾かれたように、顔を上げる。
「朝、金渡すから……安心して寝なよ」
 今日くらいはさ。
 朝起きると女の子が顔を真っ赤にして俯いていた。手にはリモコンが握られている。
「テレビ、付けちゃったの?」
 女の子は小さく頷く。こんなホテルのテレビの内容はアレな内容しかない。
 テレビなんて、珍しいから見てしまったんだろう。
「わたる。君は?」
「……つばさです」
 緊張は解いてもらえないらしい。ビクビクしてる。仕方ないけれど。
「身体、大事にしなよ。また、誘いなよ。ぼくは何もしないから」
 慣れない笑顔を浮かべて、言った。
「何で」
 知らないよ、そんなの。
 ぼくは仕事に行くために立ち上がる。金を置き、部屋から出た。


[戻る]

以下広告↓
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -