宇宙のカップルに感情移入した結果 廃退都市のとあるビルの屋上で大の字で転がり、宇宙の星で出来た川を見る。今頃宇宙のカップルは逢っているのだろうか?無意識に、長い息を吐く。 「やっぱりここにいた」 錆びて開きにくくなった扉が悲鳴を上げて開く。来たのが誰かわかっている歩は、そちらに目を向けることはない。敦紀は溜め息を吐き、股を開くなとでも言うように足を揃えられる。歩は足元を一瞥すると隣に寝ろと床を叩く。敦紀は小さく笑うと寝転ぶ。 「ねぇ、願い事書いた?」 横目で敦紀を見つめる。敦紀は天の川を見つめたまま首を横に振った。 「まだ。何書いていいのかわかんないし」 「あー確かに。てか叶えてくれんの?」 歩はケラケラと笑い、敦紀から空に視線を移す。 「だいたいさ、年に一度しか逢えないんでしょ?で、あたし達人間は向こうからしたら結構な頻度であってんじゃん?それ見てたら腹立つんじゃない?あたし達の願い事なんて叶えたくないって。それにそんな逢えなかったら浮気とかしちゃうでしょ?」 歩の言葉に敦紀は、声を出して腹を抱えて笑う。ひとしきり笑うと息を整え、星を掴むように手を伸ばす。 「夢壊すこと言うなよ」 「でも、そうでしょ?人間が勝手に祝って勝手に願い事叶えてもらおうとしてんじゃん」 上半身を起こし、肩越しに敦紀を見る。敦紀は伸ばしていた手の力を抜き、下ろす。 「どうなんだろうな。向こうからしたら、やっぱムカつくのかな」 敦紀も上半身を起こす。 「あたしだったら、腹立つかな。世界中不幸にしてやりたい」 妬みなんだけど、とボソリと呟いて自嘲する。敦紀は座ったまま空を見上げて頷く。 「……わからなくもない」 2009.07.07 ← |