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クレイグと幸太郎

 人通りの少ない、川沿いの小さな道。周りには、田んぼや畑、スギ林しかない。
 何もない、田舎道を金髪の青年が歩いていた。その後をこっそり――いや、気付かれていないと思って、少年がついて歩く。
 ――外国人が、珍しいのかもしれない。
 青年はそう思い、小さく笑う。自分が、日本語を流暢に話したら、驚くだろうか。大人げないとは思いつつ、青年は悪戯心が擽られ、振り返った。振り返った瞬間、少年はビクリと肩を揺らし、近くの木に身を隠す。
「出ておいでん」
 方言混じりの青年の言葉に、少年が目を見開く。
「おいでんて。とって喰ったりせんわ」
 手招きする青年に、少年は恐る恐る近付く。
「おれ、クレイグっていうんだけど。アンタ、名前は?」
 少年の頭をくしゃくしゃと掻き回す。少年はクレイグの手を鬱陶しそうに払った。
「幸太郎」
 ムスッとして、幸太郎は応える。子供扱いが気に入らないらしい。
 そうかそうか、と笑いクレイグは幸太郎に目線を合わせるためにしゃがんだ。
「なんで、おれの後を付けとっただん?」
「この辺で見たことなかったもんで、迷子かと思った」
 クレイグの問いに、幸太郎は答える。
 まだ子供扱いされていることに、幸太郎は抗議するように睨んだ。クレイグは、その視線に気付いているのか、いないのか幸太郎の頭を撫でる。
「優しいな。ほいでも、知らん人についてったらいかんよ。浚われるに」
 ニッ笑い、クレイグは幸太郎の鼻の頭を軽くつつく。幸太郎はその手を叩き落とす。
「そんな簡単に浚われんわ。アンタこそ、浚われても知らんに。この辺、人通り少ないもんで変質者多いだでね」
 幸太郎は、仕返しとばかりに、クレイグの鼻をつつく。ついでに、薄いそばかすのある頬もつついた。
「まぁ、オレがおるで大丈夫だけどね」
 胸を張り、口角をあげる。手は腰に付いていた。自信に満ちた幸太郎をクレイグは微笑ましく見つめる。
「ほう。守ってくれるのかん?」
 膝の上で腕を組み、クレイグはそこに顎をおく。少し、幸太郎より目線が低くなった。そのまま幸太郎を見つめ、ニンマリ笑う。
「守ってやるわ」
 瞬間、幸太郎の言葉がかき消される。一斉にカラスが鳴き、羽ばたいた。
 2人でビクリと身体を揺らし、周りを見る。キョロキョロとした後、目があった。幸太郎は気まずそうに咳払いをし、クレイグの手を握る。
「手、繋いどいてやるわ。早く立ちん」
 幸太郎はクレイグの手を引いた。クレイグはクスリと笑い、立ち上がる。
「で、どこに行きたかっただん?」
 自分より、遥かに高い位置になった目を下から覗き込む。クレイグは幸太郎の頭に手を乗せ、よくぞ聞いてくれました! と言うように、口を開いた。
「山奥に、まだサムライとニンジャが隠れ住んどるって、友人に聞いたもんで」
 目を輝かせ、クレイグは熱く語る。
 幸太郎は間抜けな声を上げ、クレイグを見上げた。そんな視線に気付くことなく、クレイグはグッと拳を握る。
「会いに来た!」
 力強く、クレイグは言った。
「馬鹿じゃん。居るわけないじゃん。日光行けよ!」
 心配して損した、と幸太郎はため息を吐いた。
2013.04.18 即興小説トレーニングUP
お題:日本式のいたずら
2013.05.21 加筆修正サイトUP
読みづらいですよね。


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