ぶらぶら ※死・グロテスク・不謹慎 親友が自殺した。 おれに悩みを相談することもなく、遺書も残さずに。親族のいないアイツが残していったのは、娘のように可愛がっていた子猫だけだった。 第一発見者はおれだった。アイツが死んだ日、子猫がおれの家に来た。アイツ以外には指一本触れさせなかった子猫。おれの足にまとわりつき、みゃあみゃあ鳴いた。腹でも空いているのかとアイツが置いていった猫缶を開けてやってもそれを食わずに、おれの足にまとわりついたまま。そこで胸騒ぎがした。鈍い自分を殴ってやりたい。こいつが来るときは、アイツが連れてくるのだ。今日はアイツがいない。 「おい、アイツはどうした?」 答える筈なんてないが、思わず子猫に聞いた。子猫は動きを止め、おれを見上げる。そして、みゃあと鳴いた。 おれは慌てて子猫を抱き上げてアイツの家に向かった。その間、子猫はおれの腕の中から逃げることはなかった。 アイツの家に着くとノックもせずに部屋の中に入った。部屋に入った瞬間、噎せ返るような悪臭が鼻についた。子猫はおれの腕から抜け出し、奥へ入っていった。おれもそれについて奥へ。 瞬間、時が止まった。 ぶらぶらしてる、アイツが、首の伸びたアイツが、酷い顔をしたアイツが、いた。 なんで、アイツこんなぶらぶらしてんだ?なんで別人みたいな顔してんだよ。なんで潔癖性のくせに、そんな汚ねぇことになってんだよ。なんだよ、これ。なんで…… 首吊ってんの? 子猫は体が汚れることも気にせずに、アイツの体液まみれの床の上で泣いている。 慌てて警察に電話するとアイツをおろさないで下さいと言った。それに対しておれが怒鳴ると絶対にダメだと言われた。 早くおろしてやんないとさ。アイツ、苦しいままじゃないか。目の前が真っ白になった。 気付いたら、アイツの体液まみれの子猫抱いて、廊下で座っていた。 警察が目の前にいて、事情が聴きたいからついてきて欲しいと言われた。その人は口の端が切れていて、制服が乱れていた。 でも、アイツをおろさなきゃって言ったら、もうおろしましたと返される。そして、おれの体を支えるようにおれを立たせ、パトカーに乗せられた。 子猫がみゃあと鳴いた。 2011.04.07 ← |