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刻まれた今日1


注意
この作品は戦争中の日本が舞台になっています。
戦争で傷付いた方、亡くなられた方を誹謗中傷するものではありません。
また、戦争等を賛美するものではありません。
実際の人物とは関係ありません。
この作品はフィクションです。
以上の事を理解した上でお読みください。


 クーラーのない畳の部屋で腹を出して横になる。暑い。
 お盆ということで、田舎のじいちゃん家に来ていた。クーラーが無く、都会のコンクリートジャングルよりはマシとはいえ、暑いものは暑い。
 クーラーのあるところへ避難しようにも、外は田んぼや畑で娯楽が何にもない。コンビニすら歩いていける距離にはない。
 男子高校生である俺には刺激が無さすぎて、正直もう帰りたい。カラオケやゲーセンに行きたい。あ、プールもいいなあ。なんて考えて暑さにダレているとじいちゃんが隣に座った。
「翔太郎(しょうたろう)、今日は終戦の日じゃな」
 唐突に切り出したじいちゃんを見上げる。じいちゃんは遠い目をして、外を見つめている。懐かしむように、悲しそうに、さみしそうに、眉間を寄せている。
 じいちゃんは小さかったからあまり覚えてなかったらしいけど、お父さんとお兄さんがお国のために戦って亡くなったらしい。
 戦争の痛みは忘れたらいかん、と耳にタコが出来るほど、小さい頃から言われてきた。
「もう66年もたったんじゃな」
 じいちゃんが何を考えてるか、何を思って言っているのかわからなかったが、とてもずっしりと胸に落ちる。
 上半身を起こしてじいちゃんを見ると頭を撫でられた。子供扱いされているようで嫌だったけど、振り払うことは出来なかった。
「よし、翔太郎。スイカ食うぞ」
 待っとれ、そう言ってじいちゃんは立ち上がり、台所へと消えていった。
「66年か」
 終戦から66年、太平洋戦争開戦からは約70年だ。
 俺と同じ年の奴がたくさん、たくさん、亡くなってるんだよな。何だか、不思議だ。今の日本じゃ考えられない。
 さっきのじいちゃんのように外を見る。青い空と大きな入道雲が見えた。
 しばらくそれを見ていると鈴の音と強い風が通り抜ける。目を開けてられないほど風が強く、蝉よりも鈴の音が五月蝿い。



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