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曖昧四角2


 客を送るためにショウちゃんが店を出て行った。
 常連客達が、またアイツかなんてため息交じりに言うもんだから、思わず笑ってしまう。
「ホント健気よねえ」
 アタシの幼馴染は昔からヒーローだった。
 小さい頃から女装なんてしていたアタシは、よくイジメの対象になっていた。毎回助けてくれたのがショウちゃんだった。落ち込むアタシを励ますのもショウちゃんだった。
「半次郎は気持ち悪くないよ。可愛いよ」
 なんて言ってくれるショウちゃんが大好きだった。もちろん、恋愛感情ではない。憧れのようなもの。小さい頃から蝶よ花よと育てられたアタシと違って、男子たるもの強くなければならない!なんて言われて育てられていた。アタシはガタイだけよくなる一方で、喧嘩はてんでだめなままだったから、ちょっと羨ましかったけど、適材適所って言葉あるしってそのうち気にしなくなった。
「ただいま」
「おかえり」
 裏口から入ってきた。お冷をぶっかけられたから、着替えてきたみたいね。服装が変わっている。ついでに煙草でも吸ってきたのか、煙草の臭いがする。サボってたわね。

 仕事が終わり、店の外に出ると彼氏の河原さんがいた。ショウちゃんはそれを見ると、また明日と言って先に帰っていく。
「お疲れ様」
 河原さんが労いの言葉を掛けてもらい、思わず口元が緩む。ああ、かっこいい。
「次郎ちゃんの御家行っていいかい?」
 少年のような笑みを浮かべる河原さんに、二つ返事でオッケーする。悪いわけが無い。ホント大好き。
 マンションの部屋に入るなり、キスして抱き合う。がっついちゃうと品が無いけど、河原さんがかっこいいのがいけない。
 ベッドに寝転び、近況を報告し合う。アタシがショウちゃんの話しをすると、河原さんは眉を顰めた。あら、セクシー。
「なあに、河原さん嫉妬してるの?」
 茶化すように言うと、河原さんは苦笑を溢した。
「次郎ちゃんと彼が、心配するような関係ではないことがないのはわかってるよ。でもやっぱり面白くは無いかなあ」
 おじさんがみっともないね。なんて言って、河原さんは眉尻を下げる。
「ごめんなさい。アタシもね、河原さんが奥さんと娘さんの話しをしているときは面白くなかったわ。アタシもわかってるの。好きのベクトルが違うってことは、わかってるの」
「気持ちの整理は上手くいかないね」
 言ってどちらとも無く笑う。
「この話しは終わり。きっと、そのうち上手くいく」
 河原さんはアタシの額にキスしてくれた。幸せ。
2011.05.09


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