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大事な大事なキミの


 午後一の授業。お腹いっぱいになって、眠くなる時間。ましてや私のつまらない数学の授業となれば、寝ていてもおかしくはない。現に私の話を聞いている生徒は数人だ。
 いつものことなので、私は注意することもなく続けている。生徒にも舐められているから注意したところで、聞くことはない。
 昔は女子校だったこともあり――今は男子は少ないが、一応共学になっている――未だにお嬢様学校と言われているこの碧木学園だが、品はあるとは言えない状況だ。
 そんなことを考えながら生徒に背を向け、黒板に数式を書いていると舐め回すような視線を感じる。背筋にぞわぞわと寒気がはしった。振り返るが誰も顔を上げていない。最近、よく感じることがあるが、気のせいだ。いや、ありえない。自意識過剰というやつだろう。誰が好き好んでハゲでデブな中年をじっくりと観察するというんだ。自惚れるなと罵られそうだ。内心自嘲しながら、授業を続ける。

 その日の夜、男子寮の中の自身の部屋に戻ると違和感を感じた。これも最近度々感じる。違和感の正体を突き止めようと部屋を見渡すが変わったところはない。やはり気のせいだ。
 息を吐き、風呂に向かう。最近の私が自意識過剰なのは、きっと疲れているんだ。今日はゆっくり風呂に浸かろう。それに明日は休みだし、ビールでも飲んで寝よう。
 風呂から出ると早速、ビールを一本ちびちびとのみながら、夕食を済ませて眠りについた。

 はぁはぁと荒い息遣いが聞こえ、私は目を開ける。
 暗い自身の部屋で、自分以外の気配がする。ドッドッと心臓の音が、耳元で聞こえるようだ。身構え、闇に目が慣れるまで待った。
 ようやく目が慣れてきて、目を凝らして息が聞こえる方を見る。人影が見えた。
 強盗だろうか? 殺されたくはないから、このまま寝たフリをしたほうがいいだろうか。
 心臓の音が聞こえるんじゃないだろうか、というほど鼓動がうるさい。それでもバレないように息だけは殺す。
 相手はその場から動かず、はぁはぁと荒い息をしている。何が目的なんだ。
 早く帰ってくれ、と頭の中で願っているとそれが届いたのか、息を詰めるような声を上げ相手が立ち上がった。そして、ベッドに近づいてくる。あろうことか、布団を捲られ服を捲られた。恐怖で目が離せなくなる。
「あっ」
 相手が声を上げた瞬間、腹に何か温かいものが降ってきた。青臭いにおいが鼻につく。
 え?
 わけが解らず思わずまぬけな声が出た。
 まさか、と考えた瞬間吐き気が襲う。
 不快感から逃れるように布団で腹を拭い、ベッドの角に逃げる。
「え? あっセンセ待って!」
 近づいてきた腕を払い、もう壁があって逃げられないのに壁に背中をグイグイと押し付ける。
「ごめん、センセ。センセが可愛い顔で寝てるからつい……」
 若い男の声だ。私をセンセと呼ぶということは、生徒だろうか。
 いやがらせだろうか。いやがらせにしては、やりすぎなんじゃないだろうか。そう思うとだんだん腹が立ってきた。
 だいたい教師の部屋にこんな非常識な時間に無断で入ってきて、自慰行為におよび、挙げ句私の腹の上に出すなんて……
「出ていけ」
 極力、感情を出さないように言う。こういう輩はきっと怒ったら余計からかってくるに決まってる。
「ごめんね。怖がらないでよ」
 何が怖がらないでだ。ふざけるな。
「いいから出ていきなさい!」
 思わず声を荒げてしまった。これでは相手の思うツボだ。
「ついって言ってんじゃん。何怒ってんの? 怒りたいのはこっちだつーの」
 舌打ちが聞こえてきたかと思うと、急に声のトーンが変わった。
「それもこれも元はセンセのせいじゃん。なかなかヤらしてくんないし。オレまだヤりたい盛りの高校生なんだけど」
 男がベッドに上がってくるが、腕を強く捕まれて逃げられない。
「釣った魚には餌はやらないってやつ? 酷いなぁ。オレはセンセのために、いろいろ頑張ってんだよ? 授業中とか家の中で危ない目に遭わないように見守ってんのにさ」
 さっきから男が何を言っているのか、全然わからない。1人でペラペラと喋っている。
「今日だってベッドの下で見てたのにさぁ。いや、まぁこれは下心もあったんだけど。でもセンセすぐにイビキかいて寝ちまったし。いや、そこも可愛いんだけどね。可愛さ余って憎さつーか、性欲100倍つーか?」
 さっきまで怒っていたはずなのに、今は照れたように笑ってる。
 それが、余計に怖い。得体の知れない恐怖に、ヒュッと喉から音が出る。
「ん? どうしたのセンセ。なんか硬直してない? あっもしかして緊張してる? 何だかんだ言って、オレがベッドに上がるの初めてだもんね。つーかいいよね? いいよね。今までオレが見守ってきたんだから。オレが大事に大事に守ってきた貞操をオレにくれてもいいよね。」
 ベラベラと1人で頷き、オレの腕を引く。
 何言ってるのか、本当に理解できない。いや、したくない。
 腕を振り払おうとした瞬間、お腹を揉まれた。
「大人しくしろよ。溜まってんだよ。痛くされてぇの?」
 少なくなった髪の毛を引っ張り、男は言う。また声のトーンが変わった。
****
約二ヶ月もお待たせしてしまって、申し訳ないです!
変態ストーカー×ハゲデブなオッサンで何か狂気が見え隠れする感じとのことでしたが、どうでしょうか?
見え隠れしてるでしょうか。
言っていただければ、書き直しますのでお気軽に、書き直せと言ってください。
2012.05.13

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