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煙草の吸殻


 もわもわと紫煙が昇る。
 喫煙所の小さなテーブルに肘を付き、煙草吸う。テーブルの上には煙草の箱と缶コーヒー。
 ふと横を見るとガラスに張り付き、こちらを見ている男がいた。永山だ。
 イケメンだと女子社員たちが騒ぐだけあって、男の俺から見ても確かに整った顔をしている。が、たまにこのような奇行に走ることが、しばしばあった。
 目が合うと喫煙所に入ってきた。
 ガラスが白く曇っている。気持ち悪い。
「お疲れ様です。血圧上がりそうな組み合わせッスね」
 ニヤニヤと厭らしい笑みを浮かべ、言った。
 俺は眉間に皺を寄せ、顔をそらす。
「この灰皿のタバコ部長が吸ったやつですか」
 銀色の灰皿の中に数本ある吸殻を見つめ、永山が問う。俺は何も考えずに頷いた。
 ウハッと奇妙な声がしたかと思ったら、ポケットからビニールを取り出し、それに灰皿の吸殻を入れる。
「おっおい、お前何やってんだ」
 腕を掴んで止めようとしたが、吸殻はビニール袋の中だ。
 永山は喜色満面といった笑みを浮かべ、袋の中身を見つめる。
「コレクションにするんすよ」
 えへへと締まりのない緩い笑顔を浮かべ、永山は言った。ぞわっと鳥肌が立つ。
「何で?」
 聞いたら駄目だと解っていたが、好奇心の方が勝り問う。
「えーそれ聞いちゃいますー? 大好きな部長の唾液ついてるんすよ? 今までは観賞用と保存用に集めてたんですけど、今回のこれは使用用にしようかと思うんすよねー。舐めたり、吸ったり、オ」
「もういい! それ、返せ」
 これ以上はキャパシティーオーバーだ。無理だ。俺の常識やら経験やらが追い付かない。
 永山が持った袋を奪おうと手を伸ばすが、スッと引っ込められる。
「駄目すよ。これはもうオレのなんです」
 袋を折り畳んで内ポケットに入れようとする。そんなオレルール知るか。
「いいから返せ」
 腕を強く掴み凄むが、永山は怯まない。むしろ睨み返してきた。
「いい加減にしろ」
 腕を強く引くと振り払われた。それが上司に対する態度か、と咎めるように永山を見る。永山は目をそらし、俯いた。
 黙って見下ろすと鼻を啜る音が聞こえ、ギョッとする。
「千葉部長は、オレのこと、嫌いすか?」
 俯いたまま、ポツリポツリと溢すように問う。
 おいおいおい、マジか。
「いや、好きとか嫌いとかじゃなくてな」
 どうしたらいいのかわからず、手と首を振る。
「やっぱり嫌いなんだ」
「いや、違う。嫌いじゃない」
 更に泣き出す永山に、慌てて答える。
 嫌いではない。気持ち悪いのがたまに傷だが、仕事は出来る方だし、部下から慕われるのは嬉しい。永山の慕い方は、ちょっと――いや、だいぶかな――気持ち悪いけど。
「じゃあ、好きすか?」
 ベタで面倒くさい聞き方をしてくる奴だ。
「まあ、部下としてな」
 ここで答えを間違えると、きっと面倒なことになる。
「オレは、部長のこと好きですよ。恋愛感情です」
 上目遣いで、永山は俺を見る。
「すまん、お前の気持ちには答えられない」
 また永山は俯いた。泣くかと思ったが、すぐに顔を上げ笑う。
「わかってます。でも、オレは好きなんです」
 まっすぐと俺を見つめ、永山は言う。
 その気持ちには、きっと答えることは出来ない。俺は女性が好きだ。男を恋愛対象とは見れない。
「いや、あの」
 口を開くと永山がそれを遮るように口を開く。
「わかってます。でも、オレの気持ちを否定しないでください」
 永山に言われ、俺は何も言えなくなる。
「ってことで、お先に失礼します」
 目礼をして、永山は喫煙所から出ていく。その背中を見守り、コーヒーを飲んだ。
 俺も戻るかと灰皿に目を向け、あっと声が出た。
 結局永山に、吸殻を持っていかれた。
「永山、ちょっと待て!」
 慌てて永山を追いかける。
****
一ヶ月以上もお待たせしてしまって、申し訳ないです!
変態イケメン×流されオッサンとのことでしたので、好きに変態を書かせていただきました。
どうでしょうか?
言っていただければ、書き直しますのでお気軽に、書き直せと言ってください。
2012.04.16

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