ねこはコタツで丸くなる まだまだ寒さの残る3月中旬。 恋人の心を掴んで離さないコタツが、なかなか片付けられません。春の陽気さん、なんとかしてください。 春休みだというのに、恋人と出掛けられないだなんて思っても見なかった。 旅行に行こう、と誘ったら寒いから嫌だと言ってコタツに潜り込んでしまった。 内心ため息を吐き、コタツで無防備に眠る、愛くるしい春吉(はるよし)さんを見つめる。 可愛い。ホント、可愛い。 もう還暦を過ぎているのに、寝顔は子供みたいにあどけない。据え膳状態なのに、隙がありすぎて逆に手が出せない。 そんな春吉さんの胸の上には猫が寝ている。俺が手を出せないのを嘲笑ってるかのようで腹が立つ。 羨ましい。もう猫になりたい。 春吉さんの水分がない、肉も少ない頬に触れようとした瞬間、猫パンチを食らった。 俺を咎めるように眉間に皺を寄せ、不機嫌そうにナーと声を上げる。 コイツ! 「またか、お前。邪魔すんな」 春吉さんを起こさないように小声で、猫に抗議する。 コイツはいつもこうだ。猫の癖に、俺の恋路を邪魔する。 例えば、俺が春吉さんに近付くと眉間に皺を寄せる。ナーと不機嫌そうな声を上げる。時には猫パンチやしっぽを鞭のように俺に打ち付けてくる。いただけない、猫だ。 春吉さんになついているのか、野良だったのに今では春吉さんの家に住み着いているらしい。俺の家に来るときだって、コイツはついてくる。おかげで部屋中猫毛だらけだ。コロコロがいくつあっても足りない。 「春吉さんは俺の恋人なんだよ」 猫の目を見て、挑発するように、恋人を強調した。 猫は嫌そうに眉間の皺を深くする。 「お前はただの猫なんだよ」 言って、春吉さんに触れようとすると春吉さんが小刻みに揺れ出した。 猫がびっくりしたように、春吉さんの上から飛び下りる。 いつから起きてたんだ。 「猫相手に何言ってるの?」 口元に柔らかな笑みを浮かべ、春吉さんは言った。 欠伸を噛み殺すこともなく、大きな口を開ける。それが伝染って、俺まで欠伸が出た。 春吉さんは起き上がり、伸びをして、コタツテーブルに肘を付いてこちらに目を向ける。 めざとい猫は、すぐに春吉さんの膝に陣取った。 「猫が羨ましい」 ムッとして言うと春吉さんは笑って、俺の頭を撫でる。 「猫は、こんなことできないよ?」 ちゅっと小さな音をたて、頬にキスをくれた。 可愛い。凄く可愛い。 猫がしっぽを叩きつけてくる。 「あ、あの、猫が出来ない、もっと凄いことしたい」 頭を撫でていた手を握り、誘う。 可愛すぎて、たえられなくて指にキスをする。 春吉さんはスッと指を引き抜き、コタツに潜り込む。 「まだ日が高いからね。夜になったらね」 くすりと笑って、春吉さんは猫をコタツに引っ張り込んだ。 猫は勝ち誇ったような顔をしている。今は我慢してやろう。夜になったらお前なんて相手じゃないんだからな。 猫と視線で会話しているうちに、春吉さんから寝息が聞こえてきた。 俺は夜まで生殺しらしい。 **** だいぶ遅くなりました! 大学生×のんびりオッサンで、オッサンに振り回される大学生とのことだったんですが、どうでしょうか? のんびり、していないような……申し訳ないです。設定もやっぱりなかなか活かしきれなかったです。 言っていただければ、書き直しますのでお気軽に、書き直せと言ってください。 2012.04.01 ← |