3つのカニバリズムの話 | ナノ





 お買い物からの帰り、郵便受をチェックすると薄いブルーの封筒が入っていった。結構な厚みがある。
 何かしら?
 不思議に思いながらもそれを鞄の中に入れ、部屋に帰る。
 お夕飯の準備の前に、さっきの封筒の中身を見る。
 たくさんの写真の束と便箋。便箋には"プレゼントです"と一言書かれていた。
 写真には、夫――孝彦(たかひこ)さんと同じマンションに住んでいる若い女性が写っている。
 腕を組んで歩いている写真。キスをしている写真。抱き合っている写真。それ以上の行為をしている写真。
 ショックを受けている自分に、吃驚する。
 孝彦さんが、浮気をしているんじゃないか、なんてこと薄々わかってはいた。
 仕方が、ないもの。
 写真と便箋を封筒に戻し、ゴミ箱に捨てる。
 私は、何も見ていない。
 お夕飯の支度を始める。今日はビーフシチューにするつもりだ。
 じっくり煮込んで、野菜もお肉も口の中で溶けるようなビーフシチューが孝彦さんも私も好き。
 喜んでくれるかしら。
 そういえば、今日は何時にかえってくるのかしら。
 孝彦さんが帰ってくる前に、お風呂も沸かさなきゃ。
 家事を一通り済ませても、孝彦さんは帰ってこない。もしかしたら、お付き合いで外で食べているのかもしれない。
 電話、せめてメールしてもいいものかしら。でも、お付き合いで外食していたら、何時に帰ってくるの? なんて聞いたら白けてしまうかもしれない。
 携帯電話を開いたり閉じたりを繰り返していると、インターホンが鳴った。

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