1 お買い物からの帰り、郵便受をチェックすると薄いブルーの封筒が入っていった。結構な厚みがある。 何かしら? 不思議に思いながらもそれを鞄の中に入れ、部屋に帰る。 お夕飯の準備の前に、さっきの封筒の中身を見る。 たくさんの写真の束と便箋。便箋には"プレゼントです"と一言書かれていた。 写真には、夫――孝彦(たかひこ)さんと同じマンションに住んでいる若い女性が写っている。 腕を組んで歩いている写真。キスをしている写真。抱き合っている写真。それ以上の行為をしている写真。 ショックを受けている自分に、吃驚する。 孝彦さんが、浮気をしているんじゃないか、なんてこと薄々わかってはいた。 仕方が、ないもの。 写真と便箋を封筒に戻し、ゴミ箱に捨てる。 私は、何も見ていない。 お夕飯の支度を始める。今日はビーフシチューにするつもりだ。 じっくり煮込んで、野菜もお肉も口の中で溶けるようなビーフシチューが孝彦さんも私も好き。 喜んでくれるかしら。 そういえば、今日は何時にかえってくるのかしら。 孝彦さんが帰ってくる前に、お風呂も沸かさなきゃ。 家事を一通り済ませても、孝彦さんは帰ってこない。もしかしたら、お付き合いで外で食べているのかもしれない。 電話、せめてメールしてもいいものかしら。でも、お付き合いで外食していたら、何時に帰ってくるの? なんて聞いたら白けてしまうかもしれない。 携帯電話を開いたり閉じたりを繰り返していると、インターホンが鳴った。 [目次] [しおりを挟む] |