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電波×不良


 空き教室の窓際。
 寝惚けた頭で、時計を見ようと顔を前に向けた。――ゴッと鈍い音と衝撃そして痛みが、矢内恭太(やないきょうた)を襲う。
 痛みに呻く矢内と一緒に、呻き声が聞こえ矢内は更に口を開いた。
「痛ぇじゃねぇか」
 相手の胸ぐらを掴み、顔を見るために引き寄せる。
 矢内の知らない顔だった。
 男のくせに、綺麗な顔をしている。
「誰だ、お前」
 矢内は、不機嫌そうに寄せられた眉間の皺を、更に増やした。
「いたーい。矢内ちゃん、ちょう石頭ー」
 額を押さえ、甘ったるい、女子のような口調で男が唇を尖らせる。
 男は、矢内を知っているらしい。
「で、なんだっけ? ――あぁ、オレ、矢内ちゃんとクラスメイトなんだけどな。結城赤糸(ゆうきあかし)だよ。覚えてね。変わった名前だね、なんてよく言われるんだ」
 へらへらと結城が名乗た。その後も運命の赤い糸がどうとか、こうとか話し続ける。どうやら、残念なイケメンらしい。
 それを矢内は聞き流し、結城の胸ぐらから手を放した。
「うぜぇ、喋るな。誰も、んなこと聞いてねぇよ」
 矢内は吐き捨てるように言い、立ち上がる。
 ふと左足に違和感を感じ、視線を足元へやった。
 左足首に、赤い縄が縛られている。縄がのびている先には、結城の左足首があった。
「お前か、これやったの」
 結城の頭を無理やり下に向かせ、矢内は聞く。
「うん、だいせいかーい」
 えへへ、と笑う結城を机ごと蹴る。痛みに呻く結城の胸ぐらを掴み立たせた。
「ふざけてんじゃねぇよ」
 机越しに掴みあげているせいか、体制が苦しいらしく結城は机に両手を付いている。それが、なんだか気にくわず、また机ごと蹴った。

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