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嫌悪のずっとその奥


 非常階段の踊り場に、形のいい坊主頭が見える。高校時代と変わらぬ髪型だ。
 永野幸也(ながのゆきや)はそれを階段下から見上げた。思わず口許が緩む。
「お前ゲイだって? ヤらせてよ」
 声を掛けるとビクリと肩が震えた。
「バカじゃねぇの。帰れガキ」
 振り返ることなく、溜め息混じりに言った。永野はそれに顔を歪め、階段を上る。
「しつこい――」
 ようやく振り返り、永野を見た目が見開く。
「あーんなに仲良くしてたのに、声で気づけないなんて酷くない? ねぇ、多田くーん」
 永野を見つめ、多田彰文(ただあきふみ)は怯えたように後退る。
 それを満足そうに見つめ、顎を掴む。多田の目を見つめた。瞳が揺れる。まるでここから逃げるような動きだ。

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