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 リビングに戻るともうほとんどキューブさんはテレビから出ていた。最後の右足が、ゆっくりとテレビから出てくる。
 四つん這いになったキューブさんは、撫でまわしたくなるほど可愛い。ただ、めちゃくちゃデカイ。4mもあるのだから当然なのかもしれないが、それにしたって大きい。
 ゆっくりと上半身を起こし、立ち上がる。背中と膝を伸ばす前に、天井に頭をぶつけた。痛々しい鈍い音がして、キューブさんは頭を抱えて蹲る。
 もんどりうちたいほど可愛いが、ぐっと抑えた。キューブさんに近寄り、恐る恐る麻袋に触れてみる。手触りは普通の麻袋だ。
 何度も触っているとキューブさんが顔を上げる。正直、顔と行っていいのかわからないが。麻袋を被っているから顔のパーツは判らない、なんてことではなくこの中は触手のはずだ。
 第二形態は、この麻袋を突き破って触手が出てくるのだ。第二形態も相当可愛いことは言うまでもないだろう。その触手が中で動いているのか麻袋が凸凹と動いた。俺の手を中から触って確かめるように、不思議な感触が掌を何度も何度も行き来する。
 4mの図体で、正座で小さくなって俺の手を麻袋越しに触っているキューブさんという図は破壊力がすごい。正直、元気になってしまうのは仕方がないことだと思う。
「ま、まだ痛いですか?」
 ムラムラするのを誤魔化すように、話しかけてみる。するとキューブさんの触手が、動きを止めた。硬直したように動かなかったキューブさんの手が、地面を探るように動き出す。何をしているのか観察するが、全くわからない。暫く手を床に這わせていたキューブさんが、唸り声を上げた。
 不意に、腹部に衝撃が走り、その衝撃で胃の中のものがせり上がってきた。受け止めることも出来ず、吐き出す。立っていられなくて、蹲った。
 何が起こったのか分からなかったが、腹部に鈍痛を感じる。どうやら、キューブさんに腹部を殴られたらしい。ジンジンと鈍く重い痛みが、腹部を襲ってくる。気持ちが悪くて、食ったものや胃液を吐き出す。
 腹を殴られて、嘔吐するなんて本当にあるんだな。漫画の世界だけではなかったらしい。
 このまま、キューブさんの近くにいたらまた攻撃されるかもしれない。少しでも離れるように、這いつくばって進む。チラリとキューブさんを見れば、まだ何かを探すように手で床を撫でていた。
 痛みが引くまで蹲って、キューブさんを観察する。もしかしたら、鎖鎌を探しているのかもしれない。隠しておいてよかった。
 ようやくジンジンとした痛みが引き、立ち上がる。さっさと放置していた嘔吐物を片付けないと臭いで更に吐きそうだ。
 キューブさんからある程度距離を保ちつつ、雑巾を持って近づく。嘔吐物から離れたのを見計らって、ささっと拭いていく。臭いと見た目と雑巾越しの感触で嘔吐くが、なんとか吐かずに片付けられた。
 鎖鎌を探すのを諦めたのか、キューブさんはのそのそと四つん這いで歩き回っている。ハイハイする赤ちゃんのようだ。かわいい。
 部屋の隅で、ハイハイするキューブさんを眺めていると急にキューブさんが動きを止めた。窓の方に、顔を向けている気がする。麻袋の中で、ぼこぼこと触手が動いている。
 しばらくそうしていると、急に俺の腹がぎゅるると音を立てた。時計を見れば、12時を回っている。腹が減るわけだ。
 キューブさんは何を食べるのかと見れば、顔がこちらに向いている。ゆっくりと近づいてくる。また、殴られるかもしれないと、立ち上がって横歩きで距離を取る。そのまま横へ横へと移動して、部屋から出た。
 ホッと息を吐いくと扉越しにキューブさんの声が聞えた。
 スマホとポケットから取り出し、ゲームの攻略サイトを見る。キューブさんについて、なんでもいいから情報がほしい。
 動きが遅くてドジッ子だから武器を落とした時に攻撃するといい、という見知った情報の中に気になるものを発見した。
 音に敏感。
 確かに、そうだったかもしれない。ゲームでも物音を立てるとすぐに反応した。さっきも俺の声に反応して、攻撃をしてきたんじゃないだろうか。
 たぶん、目がないから他で補っているのだろう。さっき窓の方をみていたのは、たぶん雀が鳴いていたからだ。
 それがわかっていれば、殴られないように振る舞えるかもしれない。あとは、餌付けでもなんでもしてどうにか俺に懐かせればいいかもしれない。こんなことはまたとないチャンスだ。何とかして一発やりたい。
 セックスのためにデートの回数を重ねる男の気持ちがわかった。こういうことだったんだな。
 キューブさんが何を食べるのかはさすがに書いてなかった。ゲームでクリーチャーに餌付けするなんてことはないから当たり前だ。
 とにかく2人分のクリームパスタを作って持っていく。クリームパスタ食べるキューブさんが見たい。上手に食べれなくて白いソースが服とかにつくのを見たい。
 扉を開けて部屋に入ると歩き回っていたと思われるキューブさんが動きを止めて、こちらに顔を向けていた。音がなったから、それで反応したんだろう。自分の分を部屋の隅に置いて音を立てないように近づく。そっと麻袋の前にクリームパスタを差し出した。
 四つん這いだったキューブさんが、正座になった。麻袋の中の触手が、さっきまでと違う動きをしている。これは、麻袋を取ってあげた方がいいんだろうか。恐る恐る手を伸ばせば、キューブさんが自分で麻袋を縛っている紐を外しだした。自分で出来るのかとびっくりしている間に、麻袋が取られて触手が外へ出てくる。太いイソギンチャクのような触手がうねうねと動く。その内の1本が、ずぶりとパスタの中に入った。少し熱かったのか、ビクッと震え、呻き声を上げる。
 これはエロい。
 クリームでべとべとになりながら、1本の触手がぐちゅぐちゅとパスタをかき混ぜる。生唾を飲みこみそうになり、それを口の中にとどめておく。このまま飲み込んだら間違いなく音がする。それは危険だ。
 触手がクリームとパスタから頭を擡げると一気に触手が群がり、皿からパスタを持ち上げる。それを触手たちが生えているの中央へと運んでいく。
 これは、貴重な瞬間をみているのかもしれない。キューブさんの食事姿などゲームでは見れない。そもそも、そんなものはきっとプログラムされてはいない。
 中央にぱっくりと穴が開いて、パスタがそこへと入っていく。くちゅくちゅと咀嚼音が聞えてくる。
 クリーチャーが食事をしているのを見て、またも元気になる俺という画は、傍から見れば異様だろう。自分でもちょっとどうかと思う。
 皿を舐めるように触手を動かし、満足したのか皿から触手を離した。べとべとに汚れた触手達が、中央の口元へと行ったり来たりする。たぶん触手に付いたクリームを舐めているんだろう。たまに、チュッと音が鳴る。それにいちいち興奮して、息が荒くなりそうだ。
 大きく息を吐きそうになり、口元を手で押さえる。
 キューブさんの触手が、何かを探すようにそわそわと動き出した。正座をしていたキューブさんが、四つん這いになる。うねうね動いていた触手が、俺の腰辺りに触れた。また攻撃されるかもしれないと身構えるが、どうやらそうではないらしい。
 クリームと唾液(だと思われるもの)がべっとりと付いた触手が、俺の腹の辺りを行き来している。もう少し下に下がったら、危ないというか良いというか。
 突然の行動に吃驚しつつ、音や声を上げないように気を配る。キューブさんは何をしているのか。突然、キューブさんの触手が、1本下に降りてきた。思わずビクリと震えれる。それにつられるように、キューブさんの触手もビクリと震え、また上へと戻っていった。
 散々さわさわと行き来すると、キューブさんは満足したように離れていく。また麻袋を被り、紐で縛った。
 服を見るとべたべたに汚れている。そこでようやく分かった。拭かれていただけだった。

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