3 結局あれから、桜木さんは戻って来なかった。 桜木さんの後を追った女子は田中さん以外は戻ってきて、畠山を問い詰めていた。畠山はそのたびに面倒そうにしていた。 最低な男だ。モテる男は違うな。禿げろ。 「田中、帰ろ」 爽やかな笑顔を浮かべて畠山は言う。 ぶん殴りたい。喧嘩弱いけど。 「わかった」 とにかく、何のつもりか聞かなきゃならない。 畠山と教室を出る。 「そういえば、家の方向一緒だっけ?」 手始めに俺が問うと畠山は頷く。 「たまに田中見るし、一緒だと思う。田中大きいから目につくし」 ああ、横に大きいもんな。 「そっか」 さて、いつ本題に入ろう。 チラリと畠山を見ると目があって、すぐに反らした。 な、なんだ。気まずいぞ。 「あのさ、急にどうして俺と一緒に帰ろうと思ったの?」 前を見たまま聞く。 視線を感じるが気のせいだろう。 「えっ? あ、えっと田中と仲良くなりたくて」 チラリとまた畠山を見ると顔が赤い。 止めろ。桜木さんから変な事を聞いたせいで、何か……まるで。 いや、ない。絶対ない。あってはならない。 徐々に距離を取ろうと歩く度に離れようとするが、畠山は空気を読まずについてくる。 なんなんだよ、こいつ! 「あっ田中、メアド交換しよ」 言って、畠山はケータイを取り出す。 俺もケータイを出す。 赤外線通信とか、久しぶりにやった気がする。 俺のケータイにイケメンのメアドと番号が登録され、畠山のケータイにはブサメンのメアドと番号が登録された。忌々しい。 「メールするね」 なんて嬉しそうに笑う。 だから止めろって。男相手にそんな嬉しそうな顔をするな。 [戻る] [しおりを挟む] |