4 「意味わかんないこと言うからでしょ」 「意味はわかるだろ。他に好きな人が出来たって言ったら、誰? ってしつこく聞くから答えただけだろ」 帰っていいだろうか。俺必要ないじゃん。帰りたい。 「だから意味わかんない。その答えが田中とかないでしょ」 確かにそうなんだけど、なんだろ。この全否定された感じ。 「田中に失礼だろ」 確かにそうなんだけど、お前が言うとなんか気持ち悪い。やめろ。 「あ、あのさ。俺帰っていいよね?」 ピリピリとした空気の中、俺はよく頑張ったと思う。もう帰りたい。 「田中には、田中にはさ。返事を貰う前に、ちゃんと決着つけたいんだ。ちゃんと見ていてほ、」 「いや、何勝手、」 「はあ!? 何だよそれ」 畠山の言葉を遮ろうとした俺の言葉まで遮られ、桜木さんが声を荒げる。 「何が決着だよ。終わってんだろ。もういいよ。男同士とか気持ち悪い!」 桜木さんは傍にあったクッションを俺たちに投げる。 ちょっと、俺関係あるけど無くない? 「もう帰ってよ。アンタなんか大っ嫌いだ」 ベッドにあった枕で、畠山を何度も何度も叩く。 畠山は部屋から出て行く。 ワンテンポ遅れながらも、俺も出て行く。チラリと桜木さんを見ると目が合った。 「死ね」 慌てて扉を閉めると扉に何かが投げられた音がした。 死ねと言われるのは慣れているが、好きな人に言われると傷つくな。 [戻る] [しおりを挟む] |