ルームシェアはじめました | ナノ




 同棲、いやルームシェアをするには、この部屋は狭いことがわかった。ルームシェアできるような部屋を探して、そこに入居した。本当にそれだけでも、いろいろあった。いや、もういろいろと。先輩が意外にも、我侭でいろいろ苦労しました。喧嘩も何度も、した。その度にオレは負けたさ。情けないことに。女の子と喧嘩はしたことがなかったから知らなかったけど、女の子の口は凶器だ。怖い。なんであんなにポンポン出てくるのさ。
 ただ、女の子を殴らなかったことは、評価していただきたい。ありがとう、お母さん。あなたの教育の賜物です。殴ったら引き摺り回されるというトラウマから殴れませんでした。でも、逆に殴られたよ。女の子の拳も痛いんだね。初めて知った。
 でも、親睦を深めるというのは十二分に果たせている気はする。殴り合いの喧嘩(正確には、一方的に殴られてるんだけれども)できるまで仲良くなることなんて、このご時世なかなか無いんじゃないだろうか。
 同棲を承諾した時はイラッとしていて、つい言ってしまい、後から後悔もしたさ。今となっては悪くないかもしれない、と思っている。いや、悪くない。引っ越してきて、荷物を整理をしながらそんなことを思う。
「ひーらぎくーん! 見てみて?」
 名前を呼ばれて振り返れば、『ひいらぎの部屋』と書かれた楕円形のドアプレートを目の前に突き出された。何これ、恥ずかしい。
「なにソレ。オレつけないよ」
 オレが言うとえーっと不満そうに口を尖らせる。オレが言うのもなんだけど、どっちが年上かわからないな、ほんと。
 先輩のは? と聞けば、恥ずかしいからそんなのないとか言った。その恥ずかしいのをオレの部屋のドアにつけようとしていたのは誰だ。悔しくなってオレはその辺にあった紙に、『まみやの部屋』と書いてそれを先輩に渡した。怒られると思っていたら、先輩はまじまじとそれを見て、次にオレを見た。
「私の名前知ってたんだ。”先輩”って呼ぶから知らないのかと思ってた。……にしても、字汚い」
 うるさいな。あんたはオレのお母さんか!
「じゃあ、真宮さんって呼んだほうがいい?」
 言うと、先輩は小さく頷いた。
「そのほうがちょっと壁がない気がする」
 嬉しそうに、先輩は笑った。今まで壁を感じていたんだろうか。最近は結構平気で本音を言ってる気がしたんだけどな。まぁ、いいか。価値観なんて人それぞれだ。そんなことを考えていると、真宮さんはオレのドアにプレートを掛け始める。オレは慌ててそれをとり、それをまた真宮さんが掛けるというしばらくそんな地味な戦いを繰り広げた。結局オレが負け、それを付けられた。すごく恥ずかしい。
 こうして、オレたちのルームシェアがはじまった。

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