3 後日、真宮さんにオレと堤の共通の友人(斎藤)を紹介することになった。 最初はダブルデート。2人の距離が縮まったところで、2人っきりにする。これが堤と話し合った結果だ。うまく行けばいいけど、こればかりは2人の問題だからどうしようもない。でも2人には幸せになってほしい。 待ち合わせ場所のオープンカフェで、オレと真宮さんは堤と斎藤を待っている。 「斎藤くんってどんな子なの?」 緊張した面持ちで、真宮さんは問う。こんな真宮さん初めて見た。 「真面目なヤツだよ。でも、ちょっとヘタレかも」 学生時代の斉藤を思い出して、思わず口元が緩む。そんなオレの顔を見て、少し緊張が解けたみたいだ。まぁ、緊張するような相手ではない気はするけど。 2人で他愛もない話をしていると堤と斉藤が見えた。手を上げて場所を2人にアピールすると2人が寄ってきて席についた。丸いテーブルに、カップルが向かい合わせになるように席に着く。 堤の待った?というお決まりの台詞に、全然とオレは答える。向かい合った真宮さんと斉藤は初めまして、と挨拶を交わす。 「お美しいですねっ」 斉藤の褒め言葉に思わず吹き出した。いや、それはないでしょ。誰だよ、お前は! 緊張しているのか、ベラベラと真宮さんを褒めちぎる。顔が真っ赤で、変な汗までかいている。真宮さんは真宮さんで、笑顔が引き攣っている。間違いなく引いている。何とかしないとと堤に目をやると苦笑していた。 「真宮さんが綺麗なのは分かったから、何か頼んだら?」 そして、落ち着け。 斉藤と堤にメニューを渡す。 「え?あっ……ああ」 やっと自分が暴走していたことに気付いたのか、斉藤は苦笑してメニューを受け取った。斉藤はメニューに目を向ける振りをして、ちらりと真宮さんの様子を窺う。真宮さんはそれに気付かずに、コーヒーに口を付けている。 「ここのコーヒー美味しいのよ?」 コーヒーをゆっくりと置き、ふふと笑って真宮さんは斉藤に言った。 「あ、真宮さんのおすすめは?」 斉藤は慌ててメニューを真宮さんにも見えるように、テーブルの上に開く。真宮さんは微笑を浮かべてメニューを指差す。 「これなんか飲みやすくて好きかな。この店のオリジナルブレンドなんだけどね」 自然と顔が近くなっていることにも2人は気付かずに、メニューを見ながら話す。 これはいい雰囲気かもしれない。いや、まだ判んないけど。 [戻る] [しおりを挟む] |