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 店でキレるなんて、初めてだった。私もまだまだ”若い”ってことなのかしら。いやね。でも腹立つのよ。別に偏見を持つなとは言わないわ。仕方ないことだもの。何事においてもそれは付きまとうと思う。きっと私もそうだわ。でも、言っていいことといけいなことがあるでしょう。ゲイだって選ぶ権利ぐらいあるわよ。だいたい好きなタイプってのがあるでしょ。自惚れんなっていうのよ。きっと、男女の恋愛と一緒なのよ。腹立つわ!
 バイト帰り、私は柊くんに謝った。腹立ったからって、みんなの前で大きな嘘を吐いてしまった。たぶん、当分はそれに付き合ってもらわなきゃいけない。堤にも言っておかなきゃね。彼、嫉妬深いから。
「謝ることないよ、ありがとう」
 綺麗な笑顔を浮かべ、柊くんは言った。照れるわ、やめて。
「そうだ。今度堤呼んでよ、話があります。彼にも謝らなきゃ」
「今日、あいつ暇だから今すぐ呼んでおく」
 喜々としてケータイを取り出す柊くんに思わず吹き出す。恋人に会えるのが嬉しいのね。あーいいな。羨ましい。私も恋人が欲しい。出会いよ、餌あげるから来い!
「堤も真宮さんに話しあるってさ」
 柊くんは堤の話がなんなのか知ってるのか、楽しみにしててね! なんて不適な笑みを浮かべている。え? 何?
 部屋に帰ると堤がドアの前でしゃがんで待っていた。いつか不審者として職質とか受けるんじゃないんだろうか、この子。合鍵でも渡しちゃおうかしら。彼なら大丈夫だろうしね。
 部屋に入るとすぐに合鍵を渡した。きょとんとする二人。何よ、喜んでいいのよ?
「部屋の前でしゃがんでるより、中で待ってたほうがいいでしょ」
 ようやく理解したのか、二人は顔を見合わせて笑う。羨ましい。
「ありがとう、マミヤさん」
 あら、可愛らしい笑顔。もう、いい男の子同士でくっついちゃったら女の子や他の男の子があぶれちゃうじゃない。
「喜ぶのは早いわよ! お説教と謝罪があります」
 ちょっと矛盾してるわね。なんて思いつつ、リビングに三人で正座する。傍目で見たらきっとシュールな光景ね。
「ごめんなさい。バイト先で柊くんと私が付き合ってることになりました」
 頭を下げているから堤の顔が見えない。殴られるかな、痛いのいやだな。
「柊をかばってくれてありがとうございます」
 頭を上げると堤が頭を下げていた。私は事情を説明していないのに知っているってことは、柊くんはもうこのことを堤に報告済みだったのか。頭を上げてもらって、この話は終わった。よかった、怒ってなくて。まぁ、きっと気分はあまりよくないんだろうけど。
「で、俺からの話しなんですけど……俺たちの共通の知り合いにノンケの彼女のいない奴がいるんですけど、一回会ってみませんか?」
 ノンケっていうのは、異性愛者のことね(柊談)
 突然、神妙な面持ちで堤は言った。
 出会いが、餌もあげてないのにやってきた。
「そいつ年上のしっかりした女性がタイプのなんですけど、マミヤさんの話したら会ってみたいって言ってるんですよ。マミヤさん今フリーだし、会うだけあってやってください」
 フリーの件をわざわざ言わなくていいわよ。
「いいわよ、どうせフリーだしね」
 それに、目の前で見せ付けられたら恋人がほしくなるのは仕方ないと思わない? ほんと、羨ましい限りだわ。

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