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 どれだけ泣いていたんだろう。わかんない。目元が腫れていて少しヒリヒリする。目も開けにくい。お腹、すいた。そういえば、柊くんはまだドアの向こうにいるんだろうか。あそこ寒いから部屋に戻ってるといいけど。
 のっそりと立ち上がり、ドアを開けると柊くんが丸くなって寝ていた。子供が働くお母さんの帰りを待っている間に、待ちくたびれて寝てしまったような光景に思わずクスリときた。
 柊くんの近くには、ラップの掛かった料理がある。 チンして食べてね! なんて書かれた可愛らしいメモが傍においてある。
 何なんだろう、この可愛い生き物。大きな子供みたいだ。あっ良い意味でね。
「柊くん、起きなさい。こんなところで寝てたら風邪引くわよ」
 お母さんのようなセリフで言うが、起きない。少し揺すると、ゆっくりと起き上がった。
「おはよ、ってこら!」
 挨拶をしている途中で首に腕を回され、抱きしめられた。なんだ、寝起きは甘えたなのか、この子。私知らなかったわよ。そのまま引き寄せられ、柊くんの膝の上に座らされた。何コレ。私、こんなこと彼氏ともやったことないんだけど。そのままポンポンと背中を軽く叩かれる。
「おはよう、真宮さん。……まだ二時だけどね」
 耳元で話されてくすぐったい。この子、たらしなんじゃないかしら。よかったわね、私で。私じゃなかったら八割の女の子はオチてるわよ。多分。
 それにしても、体が冷たい。何時間こんなところで寝てたのかしら。
「ねぇ、たっぷり泣いた?」
 何だ、その質問は。
「泣くとね、ストレス発散になるんだって。テレビでやってたよ」
 うん。正しくは感動の涙なら、じゃなかったかしら?
「お腹すいた?」
 頷くとにっこりと柊くんは笑った。
 ようやく柊くんは私から腕を離し、私を立たせて自らも立った。冷めた料理を持って、空いた手で私の手を握ってリビングへ。至れり尽くせりで、夕食と温かいお茶が用意された。いい嫁になるな、コレは。
 柊くんも隣に座り、コーヒーを飲む。
「ごめんなさい。私、柊くんに八つ当たりした」
「別にいいよ。オレもごめんなさい。傍にいるのに、何も出来なかった」
 私が謝ると柊くんも謝った。もう、なんでこの子はこんなに……。
「いや、助かった。ありがとう。お腹いっぱいになったら元気でた」
「でも、こんな時間に食べたから太るかもね」
 私は柊くんの頭を思いっきりどつく。ホント、元気でた。

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