3 どれだけ泣いていたんだろう。わかんない。目元が腫れていて少しヒリヒリする。目も開けにくい。お腹、すいた。そういえば、柊くんはまだドアの向こうにいるんだろうか。あそこ寒いから部屋に戻ってるといいけど。 のっそりと立ち上がり、ドアを開けると柊くんが丸くなって寝ていた。子供が働くお母さんの帰りを待っている間に、待ちくたびれて寝てしまったような光景に思わずクスリときた。 柊くんの近くには、ラップの掛かった料理がある。 チンして食べてね! なんて書かれた可愛らしいメモが傍においてある。 何なんだろう、この可愛い生き物。大きな子供みたいだ。あっ良い意味でね。 「柊くん、起きなさい。こんなところで寝てたら風邪引くわよ」 お母さんのようなセリフで言うが、起きない。少し揺すると、ゆっくりと起き上がった。 「おはよ、ってこら!」 挨拶をしている途中で首に腕を回され、抱きしめられた。なんだ、寝起きは甘えたなのか、この子。私知らなかったわよ。そのまま引き寄せられ、柊くんの膝の上に座らされた。何コレ。私、こんなこと彼氏ともやったことないんだけど。そのままポンポンと背中を軽く叩かれる。 「おはよう、真宮さん。……まだ二時だけどね」 耳元で話されてくすぐったい。この子、たらしなんじゃないかしら。よかったわね、私で。私じゃなかったら八割の女の子はオチてるわよ。多分。 それにしても、体が冷たい。何時間こんなところで寝てたのかしら。 「ねぇ、たっぷり泣いた?」 何だ、その質問は。 「泣くとね、ストレス発散になるんだって。テレビでやってたよ」 うん。正しくは感動の涙なら、じゃなかったかしら? 「お腹すいた?」 頷くとにっこりと柊くんは笑った。 ようやく柊くんは私から腕を離し、私を立たせて自らも立った。冷めた料理を持って、空いた手で私の手を握ってリビングへ。至れり尽くせりで、夕食と温かいお茶が用意された。いい嫁になるな、コレは。 柊くんも隣に座り、コーヒーを飲む。 「ごめんなさい。私、柊くんに八つ当たりした」 「別にいいよ。オレもごめんなさい。傍にいるのに、何も出来なかった」 私が謝ると柊くんも謝った。もう、なんでこの子はこんなに……。 「いや、助かった。ありがとう。お腹いっぱいになったら元気でた」 「でも、こんな時間に食べたから太るかもね」 私は柊くんの頭を思いっきりどつく。ホント、元気でた。 [戻る] [しおりを挟む] |